「パリコレ」にアパレル業界人が行かなくなった理由
パリコレに行くアパレル業界人がほぼいなくなった理由
アパレル産業のビジネス上のアキレス腱は過剰在庫だ。過剰在庫は企業の利益を減らすだけでなく、昨今のSDGsの影響もあって簡単に廃棄するわけにもいかず、倉庫に大量に売れ残りの在庫がたまり、莫大な保管料を支払っている。
この過剰在庫が生まれる原因は、「売れると思った商品が、自分達が想定しているより売れなかったから」である。非常に素早くある特定の集団の中に表れ、消えてゆくものが、“fashion”なのである。
つまりわれわれがすべきことは、この短期間の間にどのようなfashionが流行るのかを予想しながら、「タイミング、価格、商品、チャネル、数量」(マーチャンダイジングの5適)をすばやく揃えることなのである。
昨今、この短命なfashionがますます短命になり、また、ネットで拡散するSNSによるバズりによって、クラスターと呼ばれる同一購買特性を持つ母集団の数も増え、複雑になってきた。
さて、このfashionの出自だが、パリコレ、ミラノコレクション、ニューヨークコレクションなど名だたるファッションショーで来年の傾向が見えてくるという説が(現場を全く知らない人から言わせれば)もっとも説得力がある。また、メディアもこれらのコレクションを掲載し「来年の傾向は、、、」などといっている。実際、ここにヒントがあると、アパレル業界ではイタリア、フランス、ニューヨークに団体旅行に行っていた時代があった。
しかし、今、これらのコレクション・ショーを見に行く業界関係者はほとんどいない。なぜなら、「マーチャンダイジングの5適」を揃えたいのだが、コレクションは「来年の傾向」の抽象度が高く、クラスターの数が増えて複雑化したいま、「5つ」のどの部分に、コレクションのどの部分を参考にすればよいかがわからなくなったからである。
実際、コレクションにでてくる服はわれわれ庶民にはおいそれと手が届く価格やデザインではなく、いまや「リアル・クローズ」といって、普段外に着てゆける服のファッションショーまでできた。つまりそうではないコレクションは、普段は着れない=リアル(現実的)ではない服、だということなのである。
ファッションはハウリングである
ファッションとは何かを抽象化して考えたときに私が思い至ったのは「ハウリング」だ。
カラオケの時や学校の集会、屋外イベントの時など、マイクの電源を入れたときに、「ビーン」「キーン」という不快な音が広がる、あの「ハウリング」だ。
結局、ファッションとは、すぐに真似をする人が増え、これがネットのSNSなどを通して、いわゆるバズる。ファッションの流行は、マイクのハウリングと同様、相互に音が発振して、増幅されてできるのだと思う。そう考えると、そのスピードや短命さから、人間がファッションのハウリングを追いかけるには、音色を変える変数が多すぎて、再現することが、すくなくとも今の技術では、できないのだろう。
私のFashion分析はここまでだ。どうだろう。みなさんも誰かがこういったではなく、私のような英英辞典を手にし、言葉が持つ本質的な意味をいくつかのケースから読み取り、その本質を掴んでみては。きっと、今まで見えなかったものが見えてくるはずだ。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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