「時代遅れ」を感じた小売業が実践すべき「出島戦略」とは?
スーパーブランドは売り減らし型、日本型SPAは売り増し型
「いつかは世界に通用するブランドを作りたい」 アパレル事業にたずさわる者であれば常に感じてることだろう。しかし、日本のアパレルを見ていると、おおよそ情報発信型のブランドなどないし、これからも生まれてこないだろうと感じる。
以前、優秀だと周りから思われていたデザイナーに、金に糸目をつけず、フルコレクションを作らせた経営者がいた。市場の追随ばかりやっていては、いつまでたっても価格競争から抜けられない。デザイナーは世界から高級な素材を集め、完成度の高いコレクションを作り上げた。しかし、できあがったコレクションは、デザイナーのやりたい通りに作ったため、結果的にパリコレでしのぎを削る世界のスーパーブランドと同一価格帯となってしまった。
当然ながら、そのブランドを市場に出すためには莫大なマーケティング費用が必要となる。デザイナーは、「やりたいことは全てやった、あとは営業で売り方を考えてくれ」と高をくくっていた。都内のショールームに飾られた高級コレクションは、それまでにかかった総経費の1/10の値段で海外の工場に転売され、デザイナーと一緒に去っていった。
欧米のスーパーブランドは、売り減らし型といって、本国で商品企画を行い、世界規模のマーケティングを通し、世界の店舗に投入された商品を売り減らしてゆく。これに対して日本のSPA型アパレルでは、売り増し型といって、店頭情報を起点にし、売れ筋の商品を単サイクルで投入し、細かく、売り増してゆく。前者ではマーケティング、ブランディングが成功の鍵になるのに対し、後者ではオペレーション効率と情報精度が成功の鍵となる。
この二つのビジネスは、同じ飲食店でも、高級料亭を経営するのとラーメン屋を経営するのと同じぐらい異なっている。また、ラーメン屋が自分の店の一角で高級料亭を開店できないのと同じぐらい、売り増し型に慣れたアパレルが、売り減らし型に手を出してもうまくゆかない。
日本のアパレル経営者が陥りがちなメンタル面での罠が、己のビジネスモデルをはき違えてしまうということだ。 実際は、自らの事業は売り増し型なのに、売り減らし型を目指そうとし、夢と現実の境界線が見えなくなる。そこから、戦略上のギャップが生じ、不明確なブランドポジショニングが生まれるのだ。
勢いあるアパレルは、このあたりの割り切りがうまい。たとえば、デザイナーといえば、「想像力と物作り」よりも「バイヤー的感覚」、すなわち、消費者の視点で商品を「選ぶ」人が活躍している。物作りの知識がないことが、かえって発想の制約条件を廃し、純粋に「お客にとって何がよいか」という視点で企画を組み立てることが強みになっている。
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