日本のアパレル業界復活のために、今すぐとるべき産業政策とは 欧米企業を出し抜く!
政策提言2つの肝
業界標準を作り上げ、産業全体の効率化を実現する、いわゆるサプライチェーンの実現には理論上9つのステップがあるとされている。まずコード体系の統一を行い、会社間における情報流インターフェイスのEDI化を実現することが必須であるとされている。これは、サプライチェーン全体のベースとなるものであり、最初に行わねばならない最も重要な部分である。
次に受発注の自動化、物流の改善、商品開発等の共同化と進むわけだが、このような状況を日米で比較してみると、アメリカではすでにステップ9まで到達している企業が、全体の約1割と言われている。一方、我が国に至っては、最も進んだ企業でもステップ1~2であり、その差は10年の開きがある。
こうした状況の中、一刻も早くチェーン全体の統一コードを確立することが急務なわけであるが、DAMAプロジェクト推進時、当時のアメリカのように、アジア諸国との対立軸を前提とした政策は、もはや実質上不可能なほど繊維製品・原料製造業の海外移転は加速しており、現代の業界を取り巻く環境にあった協業体制を作っていく方向に転換すべきという発想を持っていないことが、これまでの政策の最大の問題であった。
われわれの提言する政策案は以下の2点である。
第一に、国際企業を巻き込んだ繊維コンソーシアムを経済産業省製造産業局繊維課主導で設立し、主に調達側のグローバルなコード統一の実現を図る。
第二にここで制定されたコードを使用する海外の原料サプライヤー製品製造業者が日本向けに輸出した物品に対し、優遇輸入関税を適用する。
まず、コードの統一をはかることで、受発注の自動化や物流の改善等、改善効果が大きく現れる次の段階へ踏み出す事が可能となる。この統一コードという考え方は、産業全体に与えるインパクトは非常に大きい。この統一コードを日本が世界に発信することが、今後の産業転換におけるイニシアチブを、日本がとる上でのなによりの優先課題である。
次に、従来のような国内の業界団体を中心としたコンソーシアムではなく、アジア圏も含めた企業や、産業横断的な産学協同のグローバルなコンソーシアムを経済産業省主導によって設立し、生産~販売までの全ての企業による協業体制をつくることで産業全体の業務プロセスの統一化を実現していく。
最後に、それらのグローバル展開の国家戦略として、コンソーシアムで確立された業界標準を使用した国に対して、現在繊維製品全体に課せられた輸入関税に対して優遇関税を適応する。これを海外の工場で新しい統一コードを使用する企業に対し適用することにより、アジアの生産工場は日本市場進出のために積極的にこのコードを使用し、統一コードのグローバル化が加速する。また、日本のアパレル・小売業界は商品を安く調達するためにこの統一コードを使用することになり、自国の産業の非効率の撤廃と国際化を促進するステップが作られることになる。また、こうしたコンソーシアムに参加しているIT企業は世界を結ぶシステムインフラ構築の有用なイニシアチブをとることが可能となる。
繊維製品は先進諸国では課税対象品として国際的に認知された保護産業であり、先進諸国は等しく15-20%の輸入関税を課している。こうした中、このユニークな政策は中国などの供給国にとって日本を一気に魅力的な市場にさせることは疑いない。日本の繊維産業プロセスが一気に国際化するトリガーとなる可能性をもっている。
いかがだろうか。日本の繊維・アパレル産業が息を吹き返すためには、大生産地であるアジアを取り込む統一されたコードを作成、普及させることが欠かせないのである。デファクトスタンダードを手にし、世界に向けて発信していくことで、日本の繊維・アパレル産業はおのずとその地位が高まっていく。国の経済成長の「起こり」である繊維産業をいま一度復活させることは、日本経済の再生の起爆剤の一つともなる。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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