元ロフト社長が語る! リアル店舗に”行く意味”のつくり方
食品・非食品の垣根を越えてリアル店舗の価値を創造する
――私は食品小売のビジネスに長年携わってきましたが、ロフトを立て直した内田さんから見て、食品スーパーの非食品売場はどう映っていますか。最近ではドラッグストアなどとの競合度合いも高まってきていて、非食品部門のテコ入れを図る動きも見られます。
内田 まず言えるのは、食品と非食品という区分自体、あまり意味があるとは思えないということです。部門の垣根を越えて、思わず手に取りたくなる商品、日々の悩みを解決してくれる商品をいかに多くお客さまに提案できるかを店全体で考える。少し抽象的かもしれませんが、そういった考え方が重要だと思います。
また、食品スーパーの非食品の品揃えは生活必需品に偏重しているように感じます。もちろん購買頻度を考えればそういったアイテムを重視するのは必然ですが、前述したように日常の買物に楽しさを演出するような要素があってもいいのではないでしょうか。
いずれにしても、食品小売においてもリアル店舗の意味は今のうちに再考しておくべきでしょう。よく「日本人は実際に手に取って鮮度を確かめたい。だからリアル店舗の存在価値はゼロにはならない」といったことがいわれますが、今日の技術革新やPC機能の拡大をみると、数年後には「ネットスーパーでも十分安心して買物できる」と考える消費者は増えていくでしょう。つまり、生鮮の鮮度で集客できる時代はそう長くは続かないのです。
――となると、食品・非食品の垣根を壊し、「その店に行く意味」をいかに創造するかが大事になっていくと。
内田 そうです。時代は常に変わっていき、お客さまのニーズもどんどん多様化していく。だから、店も常に変わっていかなければならないのです。「今売れているモノを売り続ければ売上は確保できる」といった考え方は今すぐ排除すべきでしょう。
とくに、コロナ禍で人々の行動様式は一変しました。ライフスタイルや消費の考え方も人それぞれで大きく変わっています。そうした変化に対応するためには、「店の存在意義」を問い直し続ける。それが不可欠だと思います。