厚労省が誓約書を要請……阻止できなかった登録販売者「不要論」のウラ事情

玉田 慎二(医薬コラムニスト/ジャーナリスト)
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日登協の「絶対反対」意見表明にJACDSが「待った」

 登販制度の面倒な歴史のなかで、今回厚労省検討会に招聘されたのは全薬協のほうだった。日登協の参加も検討されたようだが、行政側は「JACDSの下部組織」と判断し、すでに存在感が低下していた全薬協に白羽の矢を立てた格好だ。しかし、業界団体間のポジショントークから遠ざかっていた全薬協関係者が、厚労省検討会で海千山千の官僚や医師会などと渡り合うのは“酷”だった。オブラートに包まれた登販不要論に、敏感に対応できなかったとしても責められない。

 その傍ら、日登協の一部幹部は早い段階で不要論に危機感を抱いていた。彼らは検討会で「絶対反対」を意見表明するため準備を進めていた。「職能団体としてここで断固反対しておかないと、後々会員に対して示しがつかない」(日登協幹部)という想いが強かったようだ。3回目の会合辺りで参考人として出席し、「反対」意見を表明する段取りまで付けていた。ところが“身内”のJACDSから「待ったがかかった」という。DgS側の経営効率といった“大人の事情”によるものだった。

 結局、日登協は、厚労省に意見表明への「見送り」を伝えた。すると厚労省の担当課長が「今後、反対意見を出さない」といった“誓約書”を日登協側に求めてきた。後から再度、反対意見の表明を蒸し返されるのを警戒し“保険”をかけたようだが、行政の行動としてはあまり誉められたものではない。言質の取り方がいやらしい。

 日登協は樋口会長名の誓約文書を「仕方なく、厚労省に提出した」(関係者)。その後、検討会議論がより登販不要論を容認していくなかで、日登協は再び「反対意見」の提出を試みたものの、会長名の誓約文書を盾に突っぱねられている状況だ。

 これらが、登販不要論が跋扈してしまっている要因だ。JACDSの田中浩幸事務総長は10月20日の記者会見で「検討会の場で登録販売者が『いりませんよ』という話の展開にはなっていない」などと説明し、不要論そのものを否定して距離を置く。そして、議論は波風立てずに着地した。しかし30万人にも上る、現場で働く登販からすれば“当事者不在”のまま議論は進んだように映る。やるせない想いを抱く登販は多いことだろう。(つづく)

●連載「忍び寄る登録販売者『不要論』」
第1回 忍び寄る登録販売者「不要論」 新資格に突き付けられた最大の危機とは
第2回 JACDS代表も反対せず…厚労省検討会で露になった登録販売者「不要論」

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