第81回 人口動態の変化が、ショッピングセンターを「多機能化」へ向かわせる理由とは
前回は、消費者の生活様式が変わる中、ショッピングセンター(SC)は、どれだけその変化に合わせられているのだろうかという心配をもとにこの20年の歴史を振り返った。この間、SCビジネスは成長から成熟、そして絶対数の減少という現実に直面している。そして、コロナ禍では「もう元には戻らない」と言っていたが、結局、元通りの活動をSCは再開している。果たしてそれは正しいのかについて、今回は考えていきたい。

生活様式の変化とSCを取り巻く環境の変化
前回も指摘した通り、人々の生活様式は、社会環境の変化に伴う意識変化や価値観の変容、温暖化などの気候変動による生活の変化などに依拠するが、ここで大きく指摘できるのは、人口減少であり、高齢化であり、少子化であり、晩婚化であり、生涯シングルであり、女性の社会進出であり、子育ての難しさであり、介護であり、賃金の低迷であり、物価高であり、そしてECなどネット技術の進化である。
その中でもSCビジネスにとって大きくインパクトを及ぼすのが、少子化と女性の社会進出である。
もちろん、人口減少は市場の縮小をもたらし、高齢化は消費の様相を変え、ECは消費の利便性を向上させる。しかし、これらはSCに限らず、多くの消費財やビジネスに影響するテーマである。
アパレル全盛時代を支えた団塊世代、団塊ジュニア世代も歳を重ねることで平成ニューファミリーと団塊ジュニアファミリーへと変化した。それにより消費の郊外化が進み、所得の低下とともに百貨店離れも加速した。その救世主として登場したライフスタイルストアだったが、今では団塊ジュニア世代も50代となり、消費に対する意識も変わり、震災や感染症や自然災害や戦禍を目の当たりに価値観を大きく変えている。
少子化を止めることはできない
少子化の影響の大きさを物語る上で指摘しておきたいことは、現在だけでなく、将来に渡り影響をし続けるという点である。この人口ピラミッドは、タイムマシンで過去に遡って子供を増やすことはできない限り、必ず訪れる未来である(図表1)。ただ一つの解決策は「移民の受け入れ」だが、マスク警察など多様性を許さない全体主義的意識が強い日本人がドイツやオーストラリアのような多様性を受け入れる国になれるのかは甚だ怪しい。

続きを読むには…
この記事は DCSオンライン会員(無料)、DCSオンライン+会員限定です。
会員登録後読むことができます。
DCSオンライン会員、DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。
商業施設の価値を再定義する「西山貴仁のショッピングセンター経営」 の新着記事
-
2025/12/01
第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定 -
2025/11/18
第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由 -
2025/10/31
第126回 SC運営の成否を決める顧客の滞在時間 “装置産業”としての役割とは何か -
2025/10/17
第125回 「駅ビル」が抱えるリスクを百貨店の歴史から考える -
2025/10/03
第124回 相次ぐフードホールの開業 日本で成功するためのカギとは -
2025/09/19
第123回 「営業時間統一」という常識打破に向け、SCに求められる対応とは
この連載の一覧はこちら [128記事]
関連記事ランキング
- 2025-11-07長野県内最大「イオンモール須坂」が開業! イオンスタイルでは非食品の“専門店化”に注力
- 2025-11-18第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由
- 2025-11-06「街ナカぐらし」に寄り添う!「イオンモール仙台上杉」の館づくりを解剖
- 2025-10-21実例に見る「危ない商業施設」の見分け方
- 2025-11-13知られざる四国の激戦地・愛媛県西条市 トライアル進出で環境急変か
- 2025-11-13イズミ、ハローズ、ダイレックス……中四国最大都市・広島市の視察の仕方
- 2025-11-09新潟県初の「そよら」がオープン イオンリテールの県下での存在感さらに大きく
- 2025-12-01第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定
- 2025-10-03「ニュウマン高輪」がデザインする100年先の生活価値とは
- 2013-12-02年間2ケタ以上のNSCを開業!地域密着の商業集積めざす=イオンタウン 大門 淳 社長





前の記事
