アステラス、約3200億円で米企業買収 遺伝子治療を強化
[東京 3日 ロイター] – アステラス製薬は3日、遺伝子治療薬の研究開発を手がける米バイオテクノロジー企業のAudentes社(オーデンテス)を買収すると発表した。最終的には全株式の取得を目指している。アステラスは「遺伝子治療分野でのリーディングポジション確立に向けた重要なステップ」と位置付けている。
岡村直樹副社長(経営戦略・財務担当)は会見で、オーデンテス社買収の背景について、製造・開発能力やパイプラインに加え、大規模製造能力を有していることも大きな要因だったと述べた。
同社の遺伝子治療分野での課題は「試験管でできることが臨床に使え、商業化できること」と述べ、生産技術を有しているオーデンテス社の買収によって、こうした課題の克服が可能になるとした。遺伝子治療薬の用量として、筋肉は眼の1万倍の投与量が必要となるため、商業用の大規模製造能力が必要になるという。
アステラスは、現在、がん免疫など4つの分野(プライマリーフォーカス)に優先的に経営資源を投下しているが、「遺伝子治療」は、それらに続く5つ目のプライマリーフォーカスになると位置付けている。
発行済みの全普通株式を1株60米ドルで公開買い付け(TOB)する。買収総額は約30億ドル(約3200億円)となる見込み。TOB価格は、2日終値28.61米ドルに対して110%のプレミアムが付いている。10営業日程度後にTOBを開始し、20営業日で終了する予定。
オーデンテスはTOBへの応募推奨を決議している。米国独占禁止法に基づく承認などを経て、2020年1―3月期に完了する予定。買収資金は、当初、30億ドル全額を既存の融資枠を活用した調達を予定している。
オーデンテスは12年に設立され、16年7月に米ナスダックに上場。希少神経筋疾患を対象に遺伝子治療薬を開発している。