「アジアの時代が必ず来る」 似鳥昭雄氏が語るニトリの展望とは?
決算期変更により13カ月変則決算で、かろうじて増収営業増益を達成したニトリホールディングス(北海道/白井俊之社長)。世界記録である36期連続増収営業増益となるが、最終利益は24期ぶりに減益となった。踊り場を迎えるニトリはこれからどのような成長を描いていくのか。決算説明会での似鳥昭雄会長らの発言をまとめた。
過去最多のぎっくり腰!?
連続増収増益達成の裏側
ニトリHDの2023年3月期は13カ月11日の変則決算で、売上高が9480億円、経常利益が1440億円だった。経常利益率は15.2%とほかの流通企業を圧倒する数字を維持している。「唯一無二の『製造物流IT小売業』として着実に成長を続けてきた結果」だと白井俊之社長は自負する。
快進撃を続けてきたニトリHDだが、「ここにきて踊り場に来たのではないか」という見方もある。
国内ニトリ事業では、家具・ホームファッション市場の国内シェアの約15%を占めるようになり、伸び率が鈍化し飽和状態が近づいている可能性がある。近年は、「ニトリ」に変わるフォーマットとして、雑貨・ホームファッションに特化した小型の「デコホーム」やアパレルの「N+(エヌプラス)といった新フォーマット開発や、ラインロビングにより家電製品の強化を図っている。
また、国内ニトリ事業の次なる成長エンジンとして育成している島忠事業、海外ニトリ事業については軌道に乗せるにはもうしばらくかかりそうだ。
実際、今回の増収営業増益の達成には「大変苦労した」と事業会社ニトリの武田政則社長は振り返る。
「増収増益記録をかなり意識した。成長投資の抑制などは行っていないが、3月には本部からは過去最多となる2000人を店舗、配達に応援した。それによって、ぎっくり腰になった人数も過去最多になってしまった」(武田社長)。
24年3月期は12カ月決算に戻るため、売上高9320億円の減収予想。円安、物価高、物流費高騰など逆風が吹く中で、ニトリは次にどのような手を打つのか。
勝負はこの5年!
投資も人材もアジアに振り向ける
似鳥会長はこれからますます中国、台湾などアジア市場が重要になることを強調した。
「かつて日本は世界のGNP(国民総生産)の17%を占めていたが、今は4%となっている。一方で、中国はこれからアメリカを抜き、世界1位になる。アジアの時代になる。アジアを制するものが世界を制する時代になる」。
「日本は借金がGDP(国内総生産)の2.6倍。これが3倍を超えてしまうと破綻してしまう可能性があるが、それをチャンスにしたい。為替も(1ドルが)150円、200円になるかもしれない。格付けも下がっていき、インフレが毎年10%になる時代が来るかもしれない」。
「そうなったときに人は何に支出するか。住関連や家電は我慢するわけにはいかないので、この分野の支出は続くだろう。日本が世界のリーダーでなくなっても、海外でニトリが活躍できるように準備していく必要がある」。
日本市場が停滞し、アジア市場が世界で存在感を強める中で、このように警鐘を鳴らす。さらに似鳥会長は次のように続ける。
「勝負はこの5年間。世界の経済成長を見ると、アジアだけが伸び続けている。世界はアジア中心で回っていく。日本はそのおこぼれをもらっていく。投資、人材もアジアに振り向けるべき。ニトリは創業から55年でやっと売上高1兆円が見えてきた。あと10年で2倍にするのは大変だが、世界に4000店舗をつくって実現していきたい」(似鳥会長)。
今期、ニトリは中国で40店舗の新規出店を計画している。来期には50店舗と出店を加速させる方針だ。
「中国は湾岸や大都市周辺に出店したい。店舗数が300店舗を超えなければだめかな。今年で100店舗を超える。将来的には年間100店舗、200店舗としていかなければいけない。優秀な人材を送り込み、大量出店できる仕組み、システムをつくっていく」と似鳥会長は意気込む。
これまで国内の家具・ホームファッション市場で圧倒的な地位を築いてきたニトリHD。世界を代表する企業へと脱皮するためには、アジア事業で成功を収めることが不可欠となる。