今なお輝く流通金言録その1 コンビニの父が残した言葉
コンビニの父が伝える変化対応の重要性
セブン-イレブンは圧倒的な差別化を掲げ、愚直に商品の質的向上をめざしてきた。
もちろん、それは着実に実を結んでおり、大手食品スーパーの幹部にして「セブンの商品開発力にはかなわない」と言わしめ、セブン-イレブンの商品力の強さは自他認めるところであろう。セブン-イレブン内部にも「(商品で)圧倒的な差別化を進めれば、飽和だって乗り切れるはず」と、商品力という強力な武器で突破口を開きたいと考えるのが多数派であるという。
しかし一方で、鈴木敏文名誉顧問の持論だった変化対応について「その対応力が低下しているのではないか」という指摘もある。24時間営業の是非を問われた先般の加盟店対応もその一つの現れだろう。
その“24時間営業問題”に続き、次は7pay計画が頓挫するなど、最近のセブン&アイでは問題が相次いでいる。これまた、鈴木名誉顧問の口癖だった「情報の共有化」という、変化対応の根幹をなす要素を失ってしまっているのではないかと指摘されている。
24時間営業問題の際、井阪隆一セブン&アイ社長は「現場の情報が上がりにくくなった」と本音を吐露した。加盟店の声が届きにくくなっているこの現状は、変化対応力が低下していることに他ならない。
30周年の広告の内容ではないが、加盟店1店、1店の声に耳を傾けることができなければ、加盟店が顧客に対する変化対応もできない。商品力を磨き上げるのも大事だが、加盟店あってのコンビニ本部であるならば、意思疎通を円滑にするために組織や機能を見直していく必要性が増している。
鈴木名誉顧問の発言を振り返ると、共存共栄の精神に立ち返ることの重要性を伝えているのがわかる。“コンビニ飽和論”が取り沙汰される今こそ、コンビニの父の言葉に耳を傾けてはどうだろうか。