もうデフレの申し子ではない!? 新しい戦略で今期復活した吉野家
ライバル2社は持ち帰りと店内飲食で総額を同じにするも…
2019年10月からの消費税増税と軽減税率(持ち帰りは8%だが、店内飲食は10%の適用)をめぐって、外食チェーンでの対応が注目されているが、牛丼チェーンでは、松屋、すき家がいち早く、現在の持ち帰り価格を店内飲食にも適用(本体価格の引き下げ)することを発表している。一方、吉野家の公式発表は現時点でまだないが、新聞報道などによると、「牛丼の1杯の価値は同じ」だから、持ち帰り(8%)、店内飲食(10%)とで、価格を分ける考えのようだ。
価格政策について、これまでも、吉野家は競合2社と同じ歩調をとってこなかった。
2010年前後に、2社が牛丼価格の値下げを行った際も、吉野家は従来通り、他社より100円高い380円を数年間、維持しけた。ようやく足並みをそろえたのは、消費増税(前回の5%から8%へ。2014年4月)の約1年前だ。このタイミングでの引下げについて、当時の吉野家ホールディングス会長だった安部脩仁氏は『吉野家で経済入門』(2016年、日本経済新聞出版社刊)の中で、「1年もしないうちに消費税増税がくる。その際に300円台に戻せばいいと考えていた」と語っている。価格を引き下げても結果として売上げが伸びなかったこともあるが、「1杯が200円台では吉野家の牛丼の価値に合わない」という自負もあったようだ。
はたして、消費税増税を見据えた吉野家の価格戦略はどうなるのか、2019年の同社大還暦が新たなる牛丼元年になっていくのか、今後、吉野家の“初”から目が離せない。