数億円を売るYouTuber ヒカルにみる、日本におけるライブコマース成功のヒント
長時間配信の壁
企業発信のライブコマースはどうしても難易度が高い傾向にあります。とくにライブコマースでモノを売ろうとすると、配信時間が長いほうが結果につながる傾向にあり、個人でも4〜5時間など長時間配信する人が多数います。同じように、投げ銭型のライブも長時間のほうが投げ銭も多くフォロワーも多くなるのですが、この長時間配信が企業にとっては障壁なのです。
企業の場合どうしても経済効率的に短い配信になりがちなうえ、そもそも4時間も配信するネタがありません。個人であれば、4時間配信と言っても途中で席を外したり、軽い食事をしながら配信したりと何かと自由でそれも個性と捉えられていますが、企業ではなかなかそういうわけにもいきません。このような長時間配信に対する根本的な概念が、個人と法人では全く異なるのです。
たとえば、企業がメジャーなインフルエンサーを雇ってライブ配信を行うと、それなりに大きなお金とスタッフが動くことになります。さらに芸能人やタレントを担ぐと、普通は2ヵ月前くらいから仕込み、そこに10〜20人くらい動くことになるため、毎日配信は現実的に難しくコストもかかります。
当社も以前ご支援先のライブコマースに立ち会いましたが、できるだけ少ない人数で回そうとしても、やはり現場には7人くらい必要でした。一方で中国のライブ配信を見ると、個人の場合は配信者と「天の声」と呼ばれる裏方の2人で回していることがほとんどです。当然、間接経費を削減できて毎日配信も可能なのです。
このように、日本の企業が中国でバズっている個人単位のライブコマースを真似しようとしても根本的な違いによる制約が大きいため、どうしても思うような結果を生み出すことが難しいのです。しかし、ライブコマースの可能性はまだまだ未知数です。今後、これらの課題を解決するプラットフォームやサービスが登場することを視野に入れ、その準備段階として企業ならではの強みを構築していく必要があるでしょう。
望月智之(もちづき・ともゆき)
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1 部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。
ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。
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