粗利率94%、営業利益率30%で在庫ゼロ!ZOZO、脅威のビジネスモデルをプロが分析

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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ファッション・プラットフォームZOZOTOWNを中核に、市場の大幅な縮小が進むアパレル業界において規模急拡大を続けるZOZO。その秘密と次なる成長の柱、そして資格について、22年3月期通期決算と23年3月期第2四半期期決算より分析したい。

ZOZOTOWNの売上を知っているか?

 まず、ZOZOTOWNの売上はいくらなのか? こんな初期的な質問に答えられる人が以外と少ないことに違和感をもっている人は少なくないだろう。例えば、223月期決算の数字を見ると(1)、商品取扱高という名称で、5,088億円、4,621億円と記載されており、これをZOZOTOWNの売上と思っている人が多い。

図1 ZOZOの商品取扱高(同社決算説明会資料)

 しかし、損益計算書をみると(図2)1647億円と、ZOZOTOWNがテナントからもらったと思われる手数料を売上として計上している。いわゆる今年から施行された「収益認識会計基準」であると注釈にかかれてはいるが、この図1は、決算資料に詳しくない人には、思い違いをさせる可能性は高いと思われる。いわゆる「商品取扱高」というのは、ZOZOTOWNが扱っている商品の上代をそのまま計上すると、このような数字になると思われるが、この図2に書かれている「売上高」で、割り返すと、ほとんどの「売上高」は30%前後になる。このことから、百貨店とテナントと同じ関係、つまり、テナント側が下代計上をやめて、上代計上にすることで、小売に家賃や手数料を支払い、また小売は家賃や手数料を売上にするというものだ。

図2 ZOZOの損益計算書(22年3月期) 

 このように、ZOZOTOWNの収益力を分析すれば、売上高粗利率は、なんと94.3%と極めて高い数字になり、営業利益率は29.6%とほとんど30%に近くなる。さらに、後述するように、ZOZOTOWNは百貨店と違って仕入をしないため、販売されるまでテナント側のリスクで預託在庫として保管しておき、仕入時点で引き当てし同時に出荷する。逆に言えば、売上回収が終わるまで商品引き当てをする必要がないため、キャッシュコンバージョンサイクルをマイナスにすることができるのだ。

 膨大な数と優良な質の顧客基盤さえあれば、在庫リスクはゼロとなり、粗利は脅威の94%、営業利益は30%を叩きだし、手元資金がゼロでも何十億円もの商売が可能となるわけだ。これほど、データの量と質が良質で、ZOZOTOWNという名前がファッションブランドとして認知されていれば、何も考えていないアパレルが売上を求めて寄ってくることだろう。その結果、アパレルはZOZOTOWNに顧客を奪われ、ZOZOTOWNの顧客基盤はますます膨らみ、さらに、何も考えていないアパレルが売上至上主義から売上を求めて寄ってくるという「勝ちサイクル」に入っているわけだ。アパレル企業の方は、ECモールに出店することにもっと慎重になってもらいたいと思う。

有名ブランドと激安ブランドが同列に並ぶZOZOTOWN

 さて、ZOZOTOWNには3つの事業がある。

  1. 1つ目がZOZOTOWN事業で、これはテナント(出品者)側が在庫リスクを持ち、ZOZOはテナントに限定的な販売実績データを開示するというものだ。
  2. 次がPay Payモールである。Pay Payモールを利用されている方は、最近、急にYahooショッピング(Pay Payモールは10月にYahooショッピングと統合した)の中にZOZOTOWNがあり驚いているかもしれないが、見え方としてはYahooショッピングがポータルで、その中にファッション領域としてZOZOTOWNがあるというものだ。
  3. 最後がB2B事業である。これは、ZOZOが持つECに必要なテクノロジーをテナントに貸すもので、最初期にはユナイテッドアローズやビームス、シップス(USBと業界では呼んでいた)などでスタートし、次々と有力ブランドを誘致していった。そのサービスを他のブランドにも展開しようとしているのがB2B事業である。
    余談ながら、このB2B事業からは、オンワード樫山はじめ、ユナイテッドアローズなど有力ブランドが次々と撤退し、自社ECに移行している。事実をしっかり報道していないメディアは、ユナイテッドアローズは完全撤退した、などと書いているがそれは間違いだ。今でもZOZOTOWN上でユナイテッドアローズは販売されている。ユナイテッドアローズが撤退したのは B2B事業だけで、委託販売事業からはでていっていないのである。

  現在のZOZOTOWNは、高級ブランドから激安ブランドまでが全て揃う状態だ。よく言えば何でも揃うが、悪く言えば玉石混淆で、お客は選びにくくなっているとも言える。また、ブランド側からしたら、自社のブランドではなく、価格で買われやすくなってしまう。

 お客は、オンワードやユナイテッドアローズなど、人気ブランド目当てに、ZOZOTOWNに入るも、類似商品の検索などの際に、その他韓国などの激安ブランドと横比較をして、安い方で買ってしまうからだ。

 ZOZOは、猫も杓子も自らのモールにぶち込んだ。考えてもらいたい。フードコート内に吉野家から高級懐石料理店まで揃っていても、そこで懐石料理を食べるだろうか?いつしか、ZOZOは、「ハイセンスなファッションブランド限定モール」から、「何でも屋」に変貌しているわけだ。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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