人も金も時間も他社が嫌がる生鮮強化に!成果が今、実を結んでいる=タチヤ 森 克幸 社長
ホウレンソウの相場が高ければ、その日は品揃えしない!
──タチヤさんでは、保有する40台のトラックを使って、各店舗・各部門ごとに担当者が市場に仕入れに行くというスタイルを貫いています。そこが商品政策上の差別化になっています。
森 そうです。9店舗の担当者がそれぞれトラックで仕入れに行くわけですから、他社さんから見れば、まったくの無駄にしか映らない。
ただ、そこが当社のミソなのです。自分の目で見て、自分で値段交渉して、仕入れてきたものだからこそ、原価もわかっているし、責任を持って売り切 ることができます。そして、どうしてこの商品が店頭に並んでいるか、つまりなぜこれを市場で仕入れたのか、がわかっているかどうかの差は大きい。たとえ ば、「見た目は悪いけど、味がすごくよかったから」とか「市場でダブついていたから半値以下で買えた」とか、仕入れの背景・理由がわかっていれば、お客さ まにきちんとお伝えすることができるし、自信を持って販売することができます。
──商品知識や目利きをはじめ、人材を育てるのはたいへんそうですね。
森 だから当社は出店が遅いのです。人材が育たないことには出店できないですから、大体、2年に1店舗という出店ペースです。生鮮食品には旬がありますし、時 期によっていちばんおいしい産地がどんどん移り変わっていきます。生鮮の仕入れでは、いつ産地を切り替えるのかというその変わり目を見つけるのがいちばん むずかしいのです。商品の変わり目を最低2度経験してもらうという意味で、育成にはどうしても2年はかかります。
──その時々によって変わる、いちばんおいしい産地の商品を、担当者自らが仕入れて、自分の責任で値付けして売る。シンプルですが、強いですね。
森 普通のSMの在り方だと私は思います。やはりSMは、お客さまが欲しいものを、欲しい値段で、どれだけ限られたスペースに並べるか、これだけだと思いま す。今日キャベツを買ったお客さまは、明日キャベツは買いませんから、いたずらに品揃えの充実を図る必要もありません。たとえばホウレンソウが300円 だったら、当社の店では仕入れません。絶対ホウレンソウが必要だというお客さまはまずいませんから。「ホウレンソウはないの?」といわれた時に、うまく 「ホウレンソウは原価で300円でしたから、最低でも300円で売らなければいけないので、今日は仕入れるのを止めました」と。するとお客さまは、 「えー! 300円もするの!?」と言うわけですが、ここで「今日はこれが安くてオススメです」と、代替案を言えるか言えないかの差は大きいですよね。
──お店が休みの水曜日と市場が休みの日曜日以外は毎日市場に行っているのですか?
森 その2日を除く週5日は毎日必ず行きます。行かないとわからない情報がたくさんありますから、市場には毎日行ったほうがよいです。極端な話、買うものが何 もなくても行ったほうがよい。たとえば、「明日から入荷量が減って高くなるから今日買ったほうがよい」とか、逆に「明日安くなるから、今日は少ししか仕入 れない」という具合です。
また、仕入れに使うトラックは、毎朝3時間ぐらい使うだけで、次の日の朝まで置きっぱなしです。もったいないと思われるかもしれませんが、仕方がありません。ここが当社の強みの元ですから、私は無駄だとは思っていません。
コストから入ると無駄な部分はたくさんあると思いますが、必要なコストまで削る気はありません。ましてや人件費を削る発想などありえません。SMにとっていちばん大事なのは人であり、とくに当社は人力に依存しているからなおさらなのです。
──それでも売上高販売管理費率の低さは群を抜いています。
森 売上高販売管理費率は13.6%です。お客さまに迷惑がかかるところにはお金を惜しまずにかけますが、それ以外のところにはお金は掛けない方針です。です から事務所も質素ですし、本部スタッフも数人しかいません。一方で、当社は人材が命ですから、給料もボーナスもとても高いです。