震災後はいっそう、価格志向と提案力が求められる時代になる=ヤオコー 川野清巳 社長

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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──福島第一原子力発電所に近い生産者の風評被害も懸念されています。

川野 これまでも、消費者やマスコミ受けを最重視して自粛するようなことはありませんでした。メーカーさんの不祥事の場合も同じです。安全なものは、風評に惑わされずに粛々と扱います。

 たとえばメーカーさんの商品について、何かの不祥事があったとします。でも、その企業の商品すべてがだめなのではなくて、だめな商品と大丈夫な商品があるわけです。多くのお客さまは「心理」で動きますから、実際に店頭に並べてもロスのほうが大きい。でも、その商品のファンもいますので、当社の基準で品揃えをしていきます。

「生活を楽しみたい」消費者の本質は不変

──最後に、今後の消費動向をどのようにとらえていますか?

川野 正直、わかりません。ただ、リーマンショックのときと同じようになる可能性があると思います。

 一時的には内食が増える。そしてこの先は、給料が上がらなくなる。そのときには「節約」と「安さ」が消費者のキーワードになるだろう──ということです。それに備えて、当社では売場での提案を今までの倍にしよう、「価格コンシャス」は従来の倍のスピードで取り組もうと話しています。

 「生活を楽しみたい」という消費者の本質は変わりません。ただ、実収入が減っても生活を楽しむためには、「安さ」が大事になってくるはずです。

 SMは近所のお客さまが対象なので、色々な方がいらっしゃいます。でも日本はセーフティ・ネットで生活している人が比較的少なく、貧富の差が小さく、食に関する体験や生活水準も近い枠の中に収まっている。贅沢はしないけれども生活を楽しみたいと考えている人が圧倒的に多いと思うのです。

 少子高齢化は、所得が低くなるということです。生活を楽しみたいけれどもムダはしない。節約することが当たり前になり、そのうえでどう楽しむかが課題になるでしょうね。

 そのことはこれからも変わらないと思います。今回の震災を機に変わるというよりは、震災をきっかけに将来支持されるフォーマットを強くしたいと考えています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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