売上の6割占める中国・日本で苦戦、円安…それでも最高益更新するユニクロ「4つの秘密」
ポイント④円安でも利益が増える!
為替に負けない体質はどうやって作られたか!?
私は昨年、ファーストリテイリングの21年8月期決算において、「同社は円安でも為替差益が出る」という分析をした。
アパレルはドメスティックだというのは大間違いで、ファーストリテイリングのように海外売上のほうが日本の売上より高い場合、円安は逆作用を起こす。
その結果、2022年は年初より円安が続いたが、21年8月期に168億円だった金融収益・費用は、22年8月期は海外にある資産価値が為替要因により上昇し、1162億円も計上しているのだ。
円高になれば、高いコスパで日本市場で儲け、円安になっても海外資産の相対価値向上を利食いして1000億円近い為替差益がでるわけだ。
ちなみに商社では、こういう長期的な為替予約は絶対に禁止されており、為替予約は必ず「都度予約」が原則だ。
なお、流動資産としての期末在庫が増加しているようだが、同社は、「コロナが回復し、人流がもどってきたため、売上を期待しての在庫である」とあくまでも強気だった。毎年売上、あるいは、営業利益を更新し、為替やカントリーリスクを吸収するポートフォリオを組んで確実に過去最高益を更新しているユニクロ事業に死角はみえない。
岡崎健CFOはじめ、同社には元戦略コンサルタントが山のようにいる一方、ほとんど感覚に頼った経営を行っているアパレルも多く、とてもファーストリテイリングには太刀打ちできないように見える。だが、私は同社と他社を分かつ決定的な違いは、もっと単純なところにあると感じている。
通期で減収減益となったGUは不安要素なのか?
最後に、ファーストリテイリングの中でユニクロと切っても、切り離せないジーユーについて述べたい。ジーユー事業は22年8月期、売上2460億円(同1.4%減)、営業利益166億円 (同16.4%減)と、減収減益となった。これについては、いろいろな説明がなされていたが、本質的には、私からみれば、ジーユーは国内だけで戦っているからではないかと
まとめよう。ファーストリテイリングの基幹ブランドユニクロはもはやアパレルビジネスとしては死角はない。同社の中国の回復、および、ジーユーの日本での回復が来期本物であれば、もはや同社の成長を止められるものはなく、
プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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