売上の6割占める中国・日本で苦戦、円安…それでも最高益更新するユニクロ「4つの秘密」
ポイント②日本、中国、アジア、欧米…
販売の多拠点化によるリスク分散
ユニクロを語る上でもっとも重要なことは、国内ユニクロ事業に停滞が見られる点である。コロナショックで大打撃を受けた2020年8月期の反動で、2021年8月期の売上収益は4.4%増となったものの、2022年8月期は再び3.8%の売上減収となる8102億円となった。
営業利益ベースでは対前期比0.6%増の1240億円となった。だが、この営業利益には、具体的な数字は示されていないものの、海外売上の大幅な拡大による「ロイヤルティ収入」の増加分が含まれており、この影響をすべて除くと、営業利益はおそらく対前期比で減益となったのではないだろうか。
実際、ファーストリテイリングは2023年8月期からは「肥大化した海外ロイヤルティ収入を国内ユニクロに集中させることは適切な会計処理ではないため、別勘定にする」ということを述べており、そのため、来期の国内収益は大幅に下がることに言明している。
ファーストリテイリングは中国でも負け越している。「グレーターチャイナ」における売上収益は22年8月期 5385 億円で同1.2 %増となるも、営業利益は 834 億円で、同16.8%の減益となった。同社は、(ゼロコロナ政策による)行動規制が原因だと述べており、ロックダウンが解消された6月以降は大きな伸びを示したとだけ説明し、具体的なPLは公開資料にはなかった。ファーストリテイリングは、売上の半分が日本。半分が海外、そして、その海外の半分が中国でこの二つの市場で負ける(中国は減益、日本はロイヤリティを除いた実質的な減益)ということは、かなりの不安が残る。人口が減少する日本は仕方ないとしても、中国で本当の力を確認できるのは、来期の収益となる。
さて、私が過去から再三のべているように、日本市場はユニクロをもってしても、もはや苦戦する市場になっている。私が最も懸念しているのは、いまだに、
すでに、メルカリなどを介したC2C(消費者間取引)は2兆円に迫る勢いで成長し、それに伴い国内新品アパレル 市場は減少し続け、今から5年後に、
話をユニクロに戻せば、同社は、アジアのその他、北米、欧州で爆発的な成長を実現し、海外ユニクロ事業の売上収益は22年8月期1兆1187億円、同20.3%増となり、停滞する国内ユニクロ事業に大きな差をつけた。営業利益も同42.1%増の1679億円で国内を上回った。
欧州の数字はでていないが、営業利益率20%を狙うという。なぜ、それほど儲かるのだろうか。これは、次に説明する「圧倒的に低い販管費」に秘密がある。
ポイント③多くのアパレルより10ポイント以上の差
30%台の圧倒的に低い販管費
今回もっとも強調したいことは、この「圧倒的に低い販管費」である。ユニクロの販管費は、国内事業が3000億円、売上高販管費率37%と低い。海外事業は販管費4506億円で販管費率40.3%ではあるが、各リージョンをみればほとんどが30%台だ。
私は、グローバルブランドおよび日本で勝っているブランドの販管費の売
そして、日本の肥大化した販管費の内訳でもっとも高いのは「地代家賃」である。つまり、赤字店舗ばかりなのだ。店舗の再定義など、小難しいことを考える暇があれば、こうした初期的な分析を通して赤字店舗を閉鎖する、あるいは、単店舗あたりの売上を増やす努力をすべきだろう。つまり、ファーストリテイリングは巨大店舗のほとんどが高収益で、地代・家賃が販管費に占める割合が相対的に低くなっているのだ。だから、あれだけ巨大店舗をだしても販管費が低いのである。
さらに、販管費のなかで次に高いのは人件費だ。この人員生産性が恐ろしく悪いのが日本企業であり、それは、特に本社人員である。この付加価値を生まない本社人員の生産性向上がDXなのだが、日本企業のほとんどがDXに失敗し、さらに減価償却費まで膨れ上がっているわけだ。DXを検討する前に、こうした高い視点でみたときに自社の実態としての売上と、売上に見合った販管費として、少なくとも販管費率を45%にする
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