第46回 ショッピングセンターが「キャッシュレス」化すべきこれだけの理由
ショッピングセンター(SC)では、テナントの売上金を毎日預かり、月に2度、賃料や経費を精算し残額を返却している。この仕組みは日本のSCが考案したものだが他人の口座に自分のお金を入金する信頼関係が無ければ成り立つはずもない。日本人の生真面目さがなせる技と言ってもいいだろう。しかし、この仕組みを今後も続けていくのだろうか。今号は考えていきたい。

現金を預かる仕組みができた理由
不動産賃貸業では賃料の前月払い、いわゆる前家賃が一般的だが、SCでは少し異なる。それが「売上金の預かり」だ。
賃貸住宅では売上は発生しないがSCの店舗では毎日売上が発生し、レジに現金が残る。
そのレジに残った現金は銀行があれば振り込むこともできるが店舗の閉店時間は遅く、現金を持って歩くのも危険である。そこでSCのバックヤードには現金入金機が置かれ、店舗スタッフは売上金を入金し帰宅する。驚くことにこの入金先はテナントの口座では無く、SCの口座である。他人の口座にお金を振り込む信頼関係がSCとテナントにあってこそ成り立つ仕組みだ。
このSCに振り込まれた現金は、月に2回、固定賃料は前月に、歩合賃料は次月に、この他水道光熱費や経費も合わせて精算し、残額をテナントに返却する。
SCにとっては賃料の未収を防ぎ、テナントは現金保管のリスクと毎月の賃料の支払業務から開放される。双方の利害が一致した完成された仕組みである。
便利な現金預かりの仕組みだが、いずれやめる時が来る
この現金預かりの仕組みにはクレジットカードの精算も入り、効率高く運用されているが、早晩この仕組みもやめる時が来る。その理由は、
続きを読むには…
この記事は DCSオンライン会員(無料)、DCSオンライン+会員限定です。
会員登録後読むことができます。
DCSオンライン会員、DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。
前の記事
第42回 ネットとリアルの消費者行動を分けて考えてはいけない理由と商業施設の新たな意義とは

第43回 マルイが先鞭し増え続ける「売らない店舗」 ビジネスモデルとマネタイズの正しい理解とは
商業施設の価値を再定義する「西山貴仁のショッピングセンター経営」 の新着記事
-
2025/12/01
第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定 -
2025/11/18
第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由 -
2025/10/31
第126回 SC運営の成否を決める顧客の滞在時間 “装置産業”としての役割とは何か -
2025/10/17
第125回 「駅ビル」が抱えるリスクを百貨店の歴史から考える -
2025/10/03
第124回 相次ぐフードホールの開業 日本で成功するためのカギとは -
2025/09/19
第123回 「営業時間統一」という常識打破に向け、SCに求められる対応とは
この連載の一覧はこちら [128記事]
関連記事ランキング
- 2025-11-07長野県内最大「イオンモール須坂」が開業! イオンスタイルでは非食品の“専門店化”に注力
- 2025-11-18第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由
- 2025-11-13知られざる四国の激戦地・愛媛県西条市 トライアル進出で環境急変か
- 2025-10-21実例に見る「危ない商業施設」の見分け方
- 2025-11-13イズミ、ハローズ、ダイレックス……中四国最大都市・広島市の視察の仕方
- 2025-11-09新潟県初の「そよら」がオープン イオンリテールの県下での存在感さらに大きく
- 2025-12-01第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定
- 2013-12-02年間2ケタ以上のNSCを開業!地域密着の商業集積めざす=イオンタウン 大門 淳 社長
- 2023-04-28第68回 増加する百貨店のショッピングセンター化は「一時しのぎ」に過ぎない理由
- 2025-04-04第111回 ショッピングセンターの減少と小型化が進む理由とは




