経営統合で大幅増収・増益を達成! イオン九州2022年2月期決算を解説
DX・店舗改革・食品改革を推進
ここからはイオン九州の21年度の主な取り組みを見てみたい。
注目はDX(デジタル・トランスフォーメーション)だ。イオン九州は2021年度に、スマートレジの拡大、アプリのリニューアルさらには電子棚札・デジタルサイネージ導入を進め、消費者の利便性向上を促してきた。
最も注目度が高いのがスマートレジで、セルフチェックアウトシステムの「どこでもレジ レジゴー(以下、レジゴー)」を17店舗に展開した。食品を購入する際に「手に取って商品を確かめたい」と考える消費者は少なくない。一方で、買物で最も煩わしいことの1つが「レジ待ち」だ。
レジゴーは商品バーコードを貸出用スマホでスキャンし、会計は専用レジで済ませる。レジゴーは、レジに並ばない「レジ待ち時間ゼロ」の新しい生活スタイルを消費者に提供する画期的なツールだ。
セルフレジの展開も進める。買物客自身がバーコードリーダーでスキャンするフルセルフレジを102店舗、バーコードまたはカード決済専用のキャッシュレスセルフレジを55店舗、販売スタッフがスキャンするお支払いセルフレジを164店舗に導入した。
アプリに関しては、イオン九州公式アプリをリニューアル、クーポン・お客さま参加型企画拡充やイオングループのトータルアプリ「ⅰAEON」との連携強化を図ると同時に、利用可能店舗を拡大した。
そのほか価格改定やフェース替えにも柔軟に対応できる電子棚札を17店舗に導入すると同時に、多様な情報を機動的に発信できるデジタルサイネージの活用にも取り組んだ。
店舗改革も推進した。経営統合に伴い、業態も機動的に転換しやすくなった。2021年度は、大分県の高田豊後でマックスバリュをザ・ビッグに転換するなどSMからDSへの転換を3店舗で実施した。新規出店を継続する一方で、イオン九州最古の「イオン佐世保店」(長崎県佐世保市)を閉鎖するなど、スクラップアンドビルドにも取り組んできた。
食品事業の改革も進めている。同社の食品事業売上は約3400億円と、全体の7割以上を占める中核ビジネスである。統合に伴い調達力が強化されるとともにコストダウンの実現とお値打ち価格での提供が可能となった。そのほか熊本県西原村のシルクスイートなど地産域消商品の拡充、さらには北海道セイコマートPB商品展開などイオングループの総合力を活かした商品開発にも注力した。
節目の年に業績目標を達成できるか
同社の2023年2月期の業績予想では営業収益が4770億円、営業利益が58億円を予想する。なお、同社では23年2月期より「収益認識に関する会計基準」を導入するため、前期からの増減率は公表していない。
店舗の活性化を進めると同時に、DXにより顧客の利便性向上・店舗の生産性に取り組む……イオン九州の今期の戦略は基本的に現行施策の踏襲だ。果たして思惑通りに進むのか。
アフターコロナを迎えても、九州エリア市場のV字回復は期待できない。九州には、コスモス薬品(福岡県)、トライアルカンパニー(同)といった低価格に強みを持つ地場の強敵がひしめいている。イオン九州の設立は1972年と、今年で50周年を迎える。節目の年に無事業績目標を達成できるのか、今後に注目したい。