第290回 ガスト、バーミヤン… すかいらーくが店をコロコロ変える真髄とは

樽谷 哲也 (ノンフィクションライター)
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評伝 渥美 俊一(ペガサスクラブ主宰日本リテイリングセンター チーフ・コンサルタント)

新たに代わる店を開発し、またつくり変えてゆく

 すかいらーくグループ創業社長の茅野亮(ちのたすく)(1934-2010)が「どこかでもう一回ガラガラポンをやるのだろうと思いますね」と冷静に語ってみせたのは、テーブルレストランのみにとどまらず、ファストフード店や和食店、中華料理店、地中海料理店、高級懐石料理店、サンドイッチ店、フライドチキン店などと新たな店をつくっては撤退をするというスクラップ・アンド・ビルドを繰り返していった末、いずれフォーマットを絞って再編するであろうことを見越してのことであった。そして、「ガスト」が中心のレストランチェーンとなっていった。

 「店やフォーマットは時流に合わせて乗り換える乗り物」というのが渥美俊一の変わらぬチェーンストア論であった。

 茅野は、顧客の志向や好みの変化に対応していくほかはないと、あっさり語ってのけた。

 「それは、メーカーでいうR&D(研究開発)になるのでしょうかね、要するに常に何か新しい種、シーズをつくっていかなければならないということです」

 それがたゆまざるフォーマット開発だということである。さらに、フードサービス業としてライバルでもあり、仲間でもある他チェーンのことも慮(おもんぱか)るように、このようにつづけた。

 「一気に売り上げを伸ばして、収益も出るとしましょう。でも、つくった店は現にあるわけですし、前年対比という尺度で、必ず前年に対して増えたか減ったかと、売り上げも利益も比較されるわけですから。たくさん売ったときほどたいへんになるのではないでしょうかね。しんどいと思いますよ」

 茅野の念頭には、平日は65円と極端な値下げに踏み切り、新たなハンバーガー旋風を巻き起こしていた日本マクドナルドのことがあったと思われる。

 「でも、われわれだってたいへんなんですよ。ただし、われわれは、一時は売れたとしても、そのあと売れなくなったら、さっと切り替えちゃうんですね。だから、

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記事執筆者

樽谷 哲也 / ノンフィクションライター

1967年、東京都生まれ。千葉商科大学卒業。雑誌編集者を経て、98年からフリーランスに。渥美俊一とJRC、流通企業と経営者、周辺の人物への取材は10年以上に及ぶ。「人間 渥美俊一」を渾身の筆で描く。

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