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ハブ&スポークシステムで強化される米国物流 その発明がもたらしたものとは

米国小売業の物流政策は日進月歩だ。なかでも群を抜いているのはウォルマートである。2021年8月には、提携したガティック(Gatik)社と自動運転無人配送トラックの実用化をスタートさせている。

i-stock/Rawf8

「ハブ&スポークシステム」という発明

 その内容は、ダークストア倉庫と小型店舗であるネイバーフッドマーケットを2台の無人トラックが往復ループ輸送するもの。店舗内にMFC(マイクロフルフィルメントセンター)を併設できないネイバーフッドマーケット向けの試みである。物流面でのハブ&スポークシステム導入は、すでに10マイル以内に米国民の90%が居住すると言われるウォルマートの店舗網の強みをさらに強化させそうだ。

 さて、ハブ&スポークシステムということで思い出したのは発明者のフレッド・スミスだ。念のため説明をすると、「ハブ」は自転車車輪の軸、スポークは「ハブ」から放射状に伸びた輻(や)のことを指す。スミスは、元アメリカ合衆国の海兵隊員。退役後に通ったビジネススクールでハブ&スポークシステムについてひらめき、論文を提出した。

 「6か所の空港を直行便で結ぶと15本の空路が必要。しかし、ハブ空港を設ければ、5本の空路のみで済む」ことを発見したのだ。実に単純明快である。

悔しさが生んだFedEx

 自信満々の論文だったが、担当教授の評価は「C」と低いものだった。「何くそ」と奮起したスミスは、71年にウォルマートの本部があるアーカンソー州のリトルロックで運送業を起こす。ハブ&スポークシステムを駆使することで、荷物の翌朝配達を実現した。
 故小倉昌男さんの著書『経営学』(日経BP社)では、ヤマト運輸の宅急便サービスもハブ&スポークシステムが土台になっていることが明かされている。

 スミスの発明はノーベル賞ものの価値があった。けれども、本人以外は理解できなかったのである。

 さて、スミスが起こした企業はその後どうなったのだろうか?運送会社の名前は、フェデラル・エクスプレス社(フェデックス/FedEx)。世界最大の航空貨物郵送企業であり、220の国と地域を結び、航空機679機と18万台の貨物車を所有、チームメンバー数50万人超、1営業日当たり1700万個以上の貨物を扱うまでに成長を遂げた。

 そして、起業意欲の火付け役となったスミスの論文は、テネシー州メンフィスに移った本社に「悔しさのバネ」の象徴として飾られている。