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アマゾン、中国のECに対抗し「超スロー便」と「超スピード便」を開始

小久保 重信(ニューズフロント記者)
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新型ドローン「MK30」運用開始、1時間以内に配達

アマゾンの最新ドローン「MK30」
アマゾンの最新ドローン「MK30」

 こうした一方でアマゾンは、ドローンを活用した”超スピード便”の展開も着々と進めている。24年12月には従来と比べて航続距離が2倍になり、騒音も大幅に低減された新型配達ドローン「MK30」の運用を始めたと明らかにした。

 このMK30は、米西部アリゾナ州フェニックス都市圏ウエストバレー地域と米南部テキサス州カレッジステーションに導入した。アマゾンの物流施設「セイムデー・デリバリー・サイト(即日配達拠点)」近くに住む顧客が、重さ5ポンド(2.3kg)以下の対象商品を注文すると、1時間以内にドローンによる配送を受けられる。アマゾンは小雨でも配達可能だと説明している。

 これに先立つ24年10月、アマゾンは米連邦航空局(FAA)からオペレーターの目視範囲を越えて飛行する「BVLOS(Beyond Visual Line of Sight、目視外飛行)」の許可を得た。これによって航続距離が伸び、より多くの顧客にサービスを提供できるようになった。

 同社はセイムデー・デリバリー・サイトのネットワークを拡大し、配達の迅速化を図っている。この施設は主に大都市近郊にあり、1施設当たりの大きさは大型フルフィルメントセンターの数分の1程度である。アマゾンのECサイトで人気のある約10万点の商品を常時保管し、一部を数時間以内に配達している。同社はこの施設とドローン拠点を隣接させることで、1時間以内の迅速配達を可能にした。

 アマゾンは13年からドローンを使った配送システム「プライムエアー(Prime Air)」を研究・開発してきた。19年には30分以内に配達できるよう設計した自律飛行型ドローンを披露しているが、その後試験中に何度か衝突・墜落事故を起こすなど困難な状況に直面した。

 それ以降、試作機の設計・改良を重ね、障害物検知・回避システムを開発。このシステムは水平方向にある飛行物体を認識できるほか、煙突のような静止物体も検知するほか、障害物を特定すると自動で進路を変更し衝突回避する。ドローンが降下して荷物を顧客宅の裏庭に下ろす際は、周囲に人や動物、障害物がないことも確認する。

 これによりアマゾンでは、日用品や美容用品、オフィス・技術用品など5万種類を超える商品をドローンで配達できるようになった。今後も対象地域を拡大し、全米展開をめざす考えだ。20年代末までに世界中で年間5億個の荷物を超スピード便で届けるとしている。

 これまでは迅速配達を追求・実現することで事業成長を成し遂げてきたアマゾン。しかしここに来て、予想外の中国系競合に直面し、「超遅く、低価格」のサービスを追加した。インフレが長らく続く米市場で需要が多様化するなか、新たな選択肢を提供し、顧客の取り込みやつなぎ留めを図る。今回の対照的な「超スロー便」と「超スピード便」からは、同社経営陣の柔軟性と迅速性をうかがい知ることができると筆者は考える。

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