台頭する中国系EC「Temu」と「SHEIN」にアマゾンが”厳戒態勢”の理由

小久保 重信(ニューズフロント記者)
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「安ければ待つことはいとわない顧客」に勝機を見出す

 アマゾンと中国系EC2社には決定的な違いがある。それは物流モデルのあり方だ。

 アマゾンは最近、米国での物流体制を見直した。全米の自社物流網を8つの地域に分割し、地域ごとに物流を完結できる「リージョナリゼーション(地域化)」と呼ぶオペレーションに切り替えたのだ。顧客に最も近い場所に在庫を配置することで、配送の迅速化とコスト削減を図るねらいで、すでに「23年は40億個以上の商品を当日または翌日に届けた」とアマゾンは説明している。

 これに対し、TemuとSHEINは既述のとおり越境ECである。米国の倉庫には大量の在庫を置かず、注文が入ると都度、中国から商品を輸入するかたちをとる。そのぶん配達日数は延びるが、それを商品価格を割安に設定することで補っている。ウォールストリート・ジャーナルによれば、TemuとSHEINは「待つことをいとわない顧客」が存在することを見出し、低価格戦略でアマゾンに対抗しているという。

ティックトックもEC参入 アマゾンからの引き抜きも多発!

 さらに状況は変わりつつある。というのも、Temuが最近、アマゾンのビジネスモデルを取り入れたのだ。

 簡潔に言えば、Temuが自社のECマーケットプレイスを、米国と欧州の販売業者に開放したのだ。自社ECプラットフォームに外部販売業者を参加できるようにしたことで、今後は配送コストのいっそうの低減も見込まれる。さらに最近では、中国発の動画共有アプリ「TikTok」も米国でECサービスを開始。TikTokとSHEINは、アマゾンが本社を置く米ワシントン州シアトルで従業員数を増やしている。米国における物流・サプライチェーンの構築を目的に、アマゾンの従業員を引き抜いているという。

 こうした状況下で、アマゾンはどのような対抗策を講じるのか。ウォールストリート・ジャーナルはアマゾンの”過去の行動パターン”に注目している。

  同紙によれば、アマゾンは自社事業の脅威になり得るサービスが現れると、特別チームを編成してライバルを徹底的に調査・研究してきたという。そこで得られた知見をもとに、①値下げによる対抗、②M&A(合併・買収)、③戦略の模倣という大きく3つの動きに転じる。たとえば10年には、ベビー用品通販サイトの米ダイパーズ・ドット・コム(Diapers.com)などを傘下に持つ米クイッツィ(Quidsi)を傘下に収めている。このM&Aもアマゾンという企業の行動パターンの1つだと同紙は指摘している。

 台頭する中国勢を前に、アマゾンはどのような行動パターンを選ぶのだろうか。

 

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