急拡大する「セミセルフレジ」

ダイヤモンド・リテイルメディア 流通マーケティング局
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POSメーカーの戦略
【3】
富士通
買物客の利便性向上と店舗のスペース効率向上を支援
富士通(東京都/田中達也社長)は、レジ待ちの状況を実地調査し、セミセルフレジの開発に役立てた。今後は、電子マネー対応などセルフレジの機能強化を図る。

1.6倍のスピードアップ

 富士通は、小売業の接客方針や店舗規模などに合わせたチェックアウトスタイルを提案している。

 同社のセミセルフレジ「セルフペイメントシステム・TeamPoS/SP」は、登録機を「スキャニングステーション」(SS)、支払機を「ペイメントステーション」(PS)と呼んで区別する。現在、38店舗で登録機と支払機を合わせて530台が稼働している。

 同社は店舗のレジ待ちの状況を実地調査し、セミセルフレジの開発に役立てた。調査では、「通常のレジでの支払いに、1人30秒から60秒程度の時間がかかることがわかった」と、富士通流通ビジネス本部シニアディレクターの長瀬剛実氏は言う。つまり10人の列ならば最低でも5分はかかる。支払いにかかる時間を省くことができれば、レジ待ちの長さを意識せずに済む。そこで、チェッカーが登録機に商品を登録し、買物客が支払機を使って精算するセミセルフレジの効果が期待できる。

 混雑している時に、店舗によっては1つのレーンを2人のチェッカーが受け持つ。1人が商品をスキャナーで読み取って登録し、もう1人が金銭を受け取ってお釣りを渡す。この場合、単純に2倍のスピードでレジ待ち客をさばける。セミセルフレジの場合は、「混んでいても買物点数が少ない場合は、2人制に匹敵するスピードが出る。通常の1人制のレジに比べると1.6倍程度のスピードアップになる」(長瀬氏)という。

 富士通の初期のセミセルフレジは、登録機と支払機を離して設置し、登録が完了するとバーコードが印刷された紙を渡し、客がその紙を持って空いている支払機に行って精算するという方式だった。この場合、「カゴ抜け」が発生する可能性があり、また支払機の操作に手間取っている買物客に対して操作方法を教えるアテンダントを用意する必要がある。現在は、登録機に近接して支払機を置く方法がスタンダードになっており、登録機1台に対して1.5台から2台の支払機を設置するのが標準的なパターンである。「登録機から空いている支払機を指定できるようにした。支払機には表示灯をつけており、買物客はそこに行けばスムーズに支払いができる。これならばチェッカーの目が行き届き、カゴ抜けは起きない」(長瀬氏)というわけだ。

 

富士通 長瀬剛実氏

富士通
流通ビジネス本部
シニアディレクター
長瀬剛実 氏

⇒富士通のセミセルフレジ「セルフペイメントシステム・TeamPoS/SP」

【拡大画像表示】

富士通のセミセルフレジ「セルフペイメントシステム・TeamPoS/SP」

電子マネー対応も課題

 同社の支払機の幅は420mmで、横のかご置き台を含めても765mmとスリムなサイズだ。狭い店舗でもスペースを有効に活用できる。支払機は対人センサーを搭載しており、登録を終えた客が支払機に近づくとガイダンスが流れる。さらに紙幣の挿入口や釣り銭口には案内用のLED(発光ダイオード)ランプが設置され、客が戸惑うことが少なくなるように工夫している。

 釣り銭が発生した場合、釣り札を取らなければ硬貨が出てこない仕組みも搭載した。セミセルフレジでは、意外と釣り銭の取り忘れが多いからだという。

 客は画面に表示された金額を支払う。「最初はなるべく早く支払いを済まそうという心理が働いて、紙幣で支払う買物客が多かった。セミセルフレジを使い慣れてきて、なおかつ後ろで人が待っているというストレスから解放されると、細かい硬貨で支払うケースが増えてくる」と長瀬氏は話す。細かい硬貨を支払いに使うという行為自体が、客がセミセルフレジに慣れたかどうかのバロメーターになるかもしれない。

 今後の課題には、「車椅子利用者の利便性向上」を挙げ、ユニバーサルデザインの採用が必要だとしている。また、利用者が多いとはいえないが、電子マネーでスムーズなチェックアウトを実現することも課題だ。現状、クレジットカードや電子マネーは登録機で処理することも可能だ。グループ企業の富士通エフ・アイ・ピー(東京都/米倉誠人社長)はサーバー管理型電子マネーを事業化しており、食品スーパーなどでの導入が増えているという。ペイメントの多様化に対応して、セミセルフレジの機能強化は不可欠な要素になっている。

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