急拡大する「セミセルフレジ」
POSメーカーの戦略 【1】 |
寺岡精工
「チェックアウトレボリューション」を掲げ市場開拓 寺岡精工(東京都/片山隆社長)がセミセルフレジを開発し、実用化したのは2010年。先発メーカーとしてノウハウを蓄積し、セミセルフレジの導入店舗数を急拡大している。 |
2016年末までに1500店舗へ導入
寺岡精工のセミセルフレジは、「スピードセルフ」と対面式の「スマイルセルフ」の2タイプがあり、「チェックアウトレボリューション」として小売業に提案している。
同社がセミセルフレジを初めて市場に投入したのは2 0 1 0 年。食品スーパー(SM)の文化堂(東京都/山本敏介社長)と生協のコープあいづ(福島県/荒井信夫理事長)の2店舗でのスタートだった。導入店舗は16年1月末で524店舗、16年末には1500店舗への導入を見込む。
同社がセミセルフ方式のPOSレジを開発したのは、「フルセルフレジが思うように生産性向上に役立っていないことから、店舗やチェッカー、それに買物客にとって最善の方法はないかと考え抜いた結果」と、リテイル事業部リテイル営業グループ部長の西村昌弘氏は説明する。
「スピードセルフ」の開発段階では、セミセルフ化することでどの程度、レジ待ちを解消できるか、実験を繰り返し行った。「モデルケースをつくって実験した結果、一定の時間内に最大で2倍のお客さまをさばけることがわかった」(同)という。
同業他社に先駆けて市場投入しただけに、さまざまな問題に直面した。当初は精算機を登録機から離したレイアウトを採用した。登録機からバーコードを印刷した「お会計券」を客に発行。客がその「お会計券」を持って、空いている精算機でバーコードを読み取り支払う仕組みだった。しかし、その方式では精算しないで帰る「カゴ抜け」が頻発したり、バーコードをスキャナーで読み取るということに慣れていない客が「お会計券」を紙幣挿入口に入れたり、想定外の問題が起きたという。客が精算機の操作方法に不慣れだったことも原因の1つだ。
操作方法を教えるためのアテンドスタッフを置く方法もある。しかし、それではレジ要員の削減にはつながらない。そこで登録機の横に精算機を置くレイアウトを標準的なパターンとして採用。精算に戸惑っている買物客に対しては、登録機にいるチェッカーがすぐに手助けすることができるようにした。また、バーコードを廃止して直接、精算機にデータを送る方式に改めた。精算機の画面の点滅やパトライトが点滅しているのに精算しようとしている客がいなければ、カゴ抜けが起きようとしていることがわかる。
寺岡精工
リテイル事業部
リテイル営業グループ
部長 西村昌弘 氏
⇒セミセルフレジ「チェックアウトレボリューション」。商品の登録・スキャンはチェッカーが行い、買物客が精算機で支払いをする
【拡大画像表示】
数多くの特許を取得 現金管理の効率化も支援
先発メーカーとして苦労を重ねただけに、「多くの問題点を解決してきた。それがノウハウとして蓄積され、特許の取得につながっている」と西村氏は胸を張る。
同社では、数多くの特許を取得または申請中だ。たとえば、登録機から精算機に直接データを送信する仕組みは同社の特許だ。また、精算機にカメラを設置し精算時の様子を記録したり(特許申請中)、買物客がビール券や商品券などで支払う場合、チェッカーが商品券分を差し引いて登録する仕組みも同社の特許である。
さらに寺岡精工が、店舗の利便性を考え工夫してきたのが「キャッシュマネジメントシステム」だ。精算機には硬貨、紙幣が溜まってきたり、あるいは釣り銭用の硬貨が不足する事態も起きがちだ。精算機に入っている硬貨や紙幣の状況は、「アシストモニター」で確認できる。補充や回収が必要な際には、指示用のバーコードを発行しそれを読み取ることで精算機に入っている現金の出し入れができるようになる。こうした管理を可能にしたことで現金の移動が見えるようになった。金庫に入っている現金も登録しておけば、常にどのくらいの現金が店舗にあるかを把握できる。さらに自動精算により閉店処理の時間も短縮された。違算が発生しにくく、全レジの現金を把握しているため、レジを閉めてからのレポート作成に要する時間が短い。寺岡精工の調査では、閉店処理が180分程度かかっていたケースでも30分で完了するという。セミセルフレジの採用やキャッシュマネジメントシステムの工夫など、店舗の業務効率化の余地はまだまだ残っているといえる。