世帯構成の変化やライフスタイルに合わせた「2024年・鍋商戦」の戦い方

文:原川早織(株式会社エスパシオ マーケティングアナリスト)
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平均世帯人数の減少と、単身世帯数の増加で「家族で鍋を囲む」シーンは減少傾向にある。令和のライフスタイルに合わせて、鍋を食べるシーンが変化を見せ始めた「2024年・鍋商戦」。鍋のシーズン実施回数増をめざした、タイムリーな展開方法を探る。

鍋のポジション変化

 「鍋を囲む」という言葉があるように、家庭で食べられる鍋は、かつては家族揃って楽しむシーンがスタンダードであった。寒い時期になると旬の鍋食材も出回り、小売各社の週末プロモーションは鍋を中心に回されている。しかし、世帯構成の変化とともに、家庭で食べられる鍋も、従来シーンから変化しているはずだ。

鍋
世帯構成の変化とともに、家庭で食べられる鍋も、従来シーンから変化しているはずだ。(写真はイメージ、Gyro/iStock)

 2025年には平均世帯人数が2.1人、単身世帯割合は40.1%を占めるという予測(図1)もあり、さらに共働き世帯の増加や子供の通塾率の増加で個食化が進む中、家族揃って食事をするシーンの減少は否めない。個食タイプの鍋つゆが増加したことで、必要に応じた量の鍋をつくれるようになり、外食では定食チェーンY社のシーズンメニュー「鍋定食」が、毎年11月からスタートし、すっかり定着している。さらに、Googleトレンドで「一人鍋」のキーワード検索数を見ても、コロナ禍を経て経年で増加傾向を示す(図2)

平均世帯人数と単身世帯割合の推移

Googleトレンド「一人鍋」検索数推移

 これらを見ると、従来の「家族団らん型の鍋」は、鍋をおかずのひとつとしてご飯を食べる「おかず型の鍋」の食スタイルへ少しずつ移行しているのかもしれない。

「おかず型の鍋」は鍋の提案幅を広げる?

 鍋をおかずのひとつとしてご飯を食べるシーンを想定すると、消費者としては土鍋を出さなくても、普段使いの鍋や深型のフライパンで調理して、個々に盛り付けるという手軽さがある。また、必要人数に合わせた具材量でつくれて、節約につながるメリットも出てくる。寒い時期の平日メニューとして、提案次第で実施頻度は高くなっていく。

 鍋の概念を「家族団らん型の鍋」「週末のごちそう鍋」から発展させて、「週末に楽しむひとり鍋」「平日のおかず型の鍋」を加えた二軸で組み立てることが、今のライフスタイルに即した「新・鍋ストーリー」ではないだろうか(図3)

鍋のポジション

 「おかず型の鍋」は、鍋の名前、具材にこだわらないのがポイント。鍋つゆ×チョイスした具材の組み合わせだけで、さまざまなバリエーションが成立する。具材を変えるだけで、ごちそう型にも節約型にもなり、子供が好きな鍋やお酒を楽しむ鍋、受験生の夜食鍋にも変化する。各週の生活行動や歳時記を連動させた「今週のおかず鍋」、さらに単身世帯層を意識した「週末のスペシャルおかず鍋」などの切り口で展開することで、鍋の提案幅を広げ、鍋関連の消費額を拡大していきたい。

 「家族団らん型の鍋」が週末の食卓を想定したものである以上、「おかず型の鍋」の提案を加えて平日の鍋実施率も高めていくことが不可欠。秋から冬にかけて食品売場の主力となる鍋商戦を、世帯構成の変化やライフスタイルに合わせて、確実に取り込んでいくことが重要である。

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