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インバウンド回復に濃淡=地方波及、人手確保に課題

時事通信社
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観光客でにぎわう清水寺への参道「清水坂」
〔写真説明〕観光客でにぎわう清水寺への参道「清水坂」=2023年12月、京都市東山区 (時事通信社)

 インバウンド(訪日客)需要がコロナ禍から回復し、2024年はさらなる拡大が見込まれる。だが、回復の中身には濃淡がある。特に都市圏に比べ地方の出遅れが目立ち、観光業の人手不足も深刻だ。一方、訪日客が集中する観光地ではオーバーツーリズム(観光公害)が顕在化。課題も浮き彫りとなっている。

 23年の訪日外国人数はコロナ禍前の19年の8割程度に回復、消費額は円安効果もあって初めて5兆円を超えた。小売業界では高級ブランドなど免税品販売も好調で「客足はまだまだこれから伸びる」(日本百貨店協会)と期待が膨らむ。

 カギを握るのはコロナ禍前に訪日客数の3割、消費額の3割半ばを占めた中国人の動向だ。中国政府は昨夏に日本ヘの団体旅行を解禁したが、足元の訪日人数はまだ以前の5割にも満たない。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「中国人の訪日消費が復活すれば24年は8兆円も視野に入る」と分析する。

 ただ、回復の恩恵が地方にも十分波及するかは不透明だ。観光庁調査によると、昨年10月の外国人延べ宿泊者数は約1226万人で、うち7割超の宿泊先は三大都市圏が占める。コロナ前との比較では、「ゴールデンルート」に位置する東京都(69%増)や大阪府(34%増)、京都府(20%増)が勢いを見せるが、三大都市圏以外の地域は合計で11%減と差が開く。

 背景には、地方空港で海外との直行便の復便が遅れている影響も指摘されている。他方で、外国人観光客に人気の京都や鎌倉、富士山など一部の観光地では、公共交通混雑やごみのポイ捨てといった観光公害も再燃。需要分散は急務だ。

 30年に「訪日客6000万人・消費額15兆円」の目標を掲げる政府は、「地方への誘客の推進に全力を尽くす」(高橋一郎観光庁長官)と強調するが、宿泊施設やバス、タクシーの人員不足は地方ほど深刻。受け皿が整わず混乱や需要取りこぼしを招く不安は拭えない。能登半島地震の被災地周辺の観光復興も新たな課題で、今年は「持続可能な観光立国」の成否が問われる1年となる。

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