大久保恒夫社長が語る西友の成長戦略、SPA化とリテールメディア化の狙いと詳細とは
ウォルマート(Walmart)傘下でEDLP(エブリデー・ロー・プライス)を軸に圧倒的な低価格を強みとしていた西友(東京都)。2021年3月にウォルマート保有株式の大半が楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長)とKKRに移行して以降は、低価格以外の付加価値も高めるべく、さまざまな改革が進められている。現在進行中の戦略について、大久保恒夫社長に聞いた。
「商品力」「販売力」の二本柱を強化
──21年3月の社長就任以降、この15カ月をどのように振り返りますか
大久保 西友は、価値を創造して利益を着実に稼ぎ、これを原資として時代の変化を見据えた前向きな投資を実行し、さらに大きく発展する小売企業をめざしています。まずは、「基本の徹底」として、お客さまに喜ばれ、満足される店づくりに取り組んできました。西友のアンケートシステム「ユア・レポ※注」に集まるお客さまからの評価では、過去最高のスコアを更新し続けています。
※注「ユア・レポ」:西友の利用客が品揃え、価格、接客、鮮度など大きく7項目について回答するウェブアンケート。毎月延べ約15万人が回答している
小売業が価値を創造するためには、「商品力」と「販売力」の二本柱を強化する必要があります。商品力の強化では、生産段階まで踏み込んだ製造小売業(SPA)を志向しています。自社で開発するプライベートブランド(PB)「みなさまのお墨付き」は、お客さまから根強い支持を得て好調に推移しています。また、生鮮食品や総菜でも抜本的な調達改革を進め、流通構造全体の効率化に取り組んでいます。
販売力の強化では、お客さまの視点に立って現場が主体的に考え、単品大量で集中的に売り込む「ヒーローアイテム」を軸とする売場づくりを徹底してきました。「ヒーローアイテム」の売上高構成比は順調に上がっています。
──商品力と販売力の強化は、21年6月に発表した中期経営計画(中計)で掲げています。
大久保 たとえば生鮮食品は、従来は市場や仲卸からの仕入れが中心でしたが、生産者と直接仕入れの交渉をし、中間業者を介さない直接調達の取り組みを開始しました。生鮮3部門では調達先を見直し、原価高騰にも比較的対応できています。たとえば、精肉部門では従来、アンガスビーフのステーキ肉が定番でしたが、新たに開発した交雑牛のオリジナルブランド「一期牛」など、国産牛の構成比が上がっています。
──サプライチェーンの川上から商品を調達しているのですね。
大久保 小売業は「メーカーがつくった商品のみを仕入れる」ことから脱却すべきだと考えています。自社で商品開発をリードするのがこれからの小売業です。製造小売化を強化しなければ、小売業は生き残れません。なぜなら、自社に主導権がなければ、調達先の平準化やコントロールができず、状況の変化に応じて利益を確保することも難しくなるからです。
西友は小売業としてリーダーシップをとり、流通構造全体の効率化をめざしています。生鮮部門では、調達改革によって統合型の調達モデルが進んできました。物流の効率化や在庫の適正化にも取り組んでいます。たとえば、販売計画や販売実績のデータを保有する小売業が主導することで、物流の物量予測や効率化にも寄与するでしょう。
社長自ら人材教育に注力
──中計では地域対応に取り組む方針も示しています。
大久保 西友ではこれまでローコストを最優先課題とし、効率性を重視した一律固定的なオペレーションが中心だったため、地域対応はほとんど行っていませんでした。そこで、
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