御社は大丈夫!?ナンチャッテ直接貿易が原価を押し上げている!
誤解3「商社のOEMトレードは衰退する」
世の中では「何もせずにマージンだけ持っていく」という悪評が先行している商社だが、同時に今、抜本的な改革を行っているのもまた商社である。その戦略は、商社ごとに特徴がある。大きく分類すると「売場をおさえる」、「作り場をおさえる」の2タイプある。
今、世界的に衣料品の市場は成長しているというデータもあるが、実際に伸びているのは、おおよそ先進国ではビジネスにならないような途上国の激安服が、国の経済発展に従って拡大しているだけで、当然ながら我々の事業には何の影響もない。日本の「ものづくり」はすでに消えゆきつつあり、日本市場における総投入量に占める国内生産率は3%を下回った。どんどん安い人件費を求め、グレーターチャイナを南から北へ一周し、ASEANからベンガル地方にいって、残されたフロンティアはアフリカだけという具合。その先は、「いよいよ衣料品は無料になる」とまで囁かれたものだ。つまり、付加価値と歩留まりの向上に向けた改革をすることなく、単品原価の低減のみを追求し、世界の最安値産地をさまよってきたのが、日本のアパレル企業なのだ。
私は、こうした単なる単品原価の低減施策を「南下政策」と呼んでおり、この「南下政策」はすでに限界にきている。本来企画力をあげて、適正数量を高い企画力で生産すれば、価格勝負に陥ることはないのだが、それができない産業界では、効果がすぐにでる「南下政策」を続けてきた。それが、自動車業界やパソコン業界などは常識となっているバイオーダー生産や、欧州で見直されている、ものづくりのデジタル化を阻害してきた要因なのだ。
日本でも、繊維産業の成功事例としてMade in Japanの復活を叫ぶ人もいるが、そういう人に限って総生産の97%がすでに海外移転しており、作り場がそもそも存在しない、という現実を分かっていない。マクロとミクロの視点を混同し「部分を持って全体を語る」悪習から抜け出せないでいる。
次回、商社の未来図と産業界における新しい位置づけについて語りたい。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)