数字で見る米国の変化 EC普及が一気に進み、バックエンドのDXが進展

解説:高島 勝秀(三井物産戦略研究所 産業情報部産業調査室 シニアエコノミスト)
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ここ数年、米国リテーラーを取り巻く環境は大きく変化している。人手不足や物価高、物流費の高騰を受け、流通企業はサプライチェーンの効率化やバックエンドのDXに取り組む。リアル小売業によるEC強化もコロナ禍を経て拍車がかかった。

会員サービスで顧客の囲い込み

EC イメージ
ここ数年、米国リテーラーを取り巻く環境は大きく変化している。(i-stock/Suwaree Tangbovornpichet)

 図表①は主な米国リテーラーの最新の業績である。おおむね増収となっているが、営業利益は増益企業と減益企業ではっきりと分かれている。ここ数年、米国流通業を取り巻く環境に大きな変化があった。それに合わせて、大手小売企業は大きく3つの対応を行った。

図表①:主な米国リテーラーの最新の業績
注 : 時価総額は11月4日終値ベース
出所 : 業績は各社決算資料、時価総額はBloombergのデータから三井物産戦略研究所作成

 まず1つめは、従業員の賃金上昇だ。これはコロナ禍以前から続いている深刻な人手不足対策である。会員制ホールセールのコストコ(Costco)は2021年に2回にわたり最低賃金を引き上げ、10月には最低賃金(時給)を17ドルとした。スーパーマーケット大手のターゲット(Target)は22年3月に時給の上限を引き上げ。店舗や本社に勤務する従業員を対象に、15~24ドルの間で時給を設定した。これは日本の小売企業と比較すると、2倍近い水準である。

 2つめは、プライベートブランド(PB)による価格訴求、ディスカウントストアの台頭である。図表②は世界のインフレ度合を示す消費者物価指数の推移である。米国はコロナ禍、ウクライナ戦争によるサプライチェーンの停滞などにより、21年、22年と急激なインフレに見舞われている。その中で、低価格を訴求することで他社から顧客を呼び込む戦略をとる小売企業が増えているのだ。

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