食品小売のクイックコマース、近くて便利な店舗網がカギを握る理由

宮川 耕平(日本食糧新聞社)
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クイックコマース成長の鍵は「近くて便利な店舗網」

まいばすけっとはウーバーイーツの仕組みでクイックコマースを提供している

 クイックコマースの成長性について、イオン(千葉県)のデジタル・トランスフォーメーション(DX)推進担当・菓子豊文氏は6月の会見時に「食品部門におけるデジタル売上の5~10%には持っていきたい」と述べました。また、セブンーイレブン・ジャパンの企画本部ラストワンマイル推進部マネジャー・由井大輔氏は7月の会見で、7NOWの利用件数について「10倍、20倍と増やしていきたい」と話しており、どちらも飛躍を期しています。

 売上の伸長を可能にするのは、忙しい人の増加でしょうか? 割合は増えるとしても、今後国内人口そのものは減り続けるので、それだけでは弱い気がします。買物に出るのに車を使う人が今さら徒歩には戻れないように、クイックコマースから“離れられない人”を増やす必要があります。

 クイックコマースで届ける商品は店内在庫です。店舗購入との価格差にも増して、配達の価値が認められないといけません。確実にバリューを高める方法の1つは、店舗購入との価格差を抑えることです。それには配達コストを抑えるか、商品の粗利を現状よりも高めるかになるでしょう。話の流れで、まいばすけっとと7NOWに関して、それぞれの仕組みを見てみます。

 まいばすけっとは、ウーバーイーツのサイトを窓口とし、商品のピックから会計処理、配達までウーバーイーツの配達員が行います。店側に作業負担はない一方、委託する部分のコストは主体的に下げる余地がありません。配達員は、ピック作業が増える分の対価をもらえますが、消費者が支払う配達料は変わらないので、その分の追加コストは商品の粗利で吸収することになります。

 7NOWは自前で運営し、ピックから会計処理まで店舗で行う上に、加盟店オーナーが希望すれば店が配達もします。ここに関連コストを下げる工夫の余地があります。一方で、コンビニ商品には本部と加盟店オーナー双方の粗利を確保するハードルがあります。高粗利の商品があるほど望ましいわけで、それがためにというわけでもないでしょうが、店内焼成ベーカリーは6月末の840店から今期末には3000店に、8月以降はピザの展開を200店に増やします。北海道ではトンカツの実験も開始するなど、粗利の高そうな新カテゴリーの開発を進めています。

 こうした出来たて商品は、店から購入客の家まで近い方が当然早く温かい状態で届けることができます。それも7NOWの強みで、クイックコマースにおいて「近くて便利」は、店側にも重要です。届ける配達員にとっても近い方が望ましく、同じことはセブンイレブン以外にも、他のコンビニにも、まいばすけっとにも、そのほか都市部の駅近・住宅立地のスーパーにも当てはまります。近くて便利な店舗網が、クイックコマースの新たな成長ステージを切り開くのかもしれません。

 

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