ワークマン(東京都/小濱英之社長)は3月19日、東京・墨田区の商業施設「東京ソラマチ」内に、都内初出店となる「#ワークマン女子東京ソラマチ店(以下:ソラマチ店)」をオープンした。2020年10月に神奈川県横浜市の商業施設「コレットマーレ」内への出店に続き、#ワークマン女子としては2店舗目となる。
初年度売上目標6億円、駅改札から「10歩」の好立地にオープン
#ワークマン女子は、プロの職人向け衣料を販売するワークマンが、機能性に加えてファッション性を重視したカジュアルな一般向け衣料を押し出した店づくりを行う「ワークマンプラス」に続いて、女性をメーンターゲットに据えた新業態だ。昨年10月にオープンした横浜の店舗では開業日には入場制限・3時間待ちの大盛況となった。また21年2月には国内最大規模のファッションフェスタ「東京ガールズコレクション」にも参加するなど、#ワークマン女子は認知と人気を確実に上昇させつつある。
そうしたなか3月19日にオープンしたソラマチ店は、東武スカイツリーライン「とうきょうスカイツリー」駅の改札から約「10歩」という利便性の高い立地に出店。売場面積は約290㎡で、横浜での大成功を踏まえ、ソラマチ店はこの場所で初年度売上6億円をめざす。
#ワークマン女子は、「女子」と銘打ってはいるものの、女性向けの商品だけを取り扱うわけではない。既存ワークマンプラス店舗よりも女性向け商品の割合を増やしており、ソラマチ店での配分は、男性向け4割、ユニセックス2割、女性向け4割。この配分にすることで、男性も女性も、店内の商品の6割から選ぶことができるようにするのがねらいだ。
店内のゾーニングにも工夫が光る。女性向け商品だけは「WOMEN」エリアとして、2カ所ある店舗入口のうち片方から直接入店できるようにした上で、男性向け商品・ユニセックスに関しては「スポーツ」「アウトドア」など、目的別での提案を行う。ファッション性の高い女性向け商品だけを求める顧客と、キャンプやランニングなど明確な目的にあった商品を探している顧客、どちらのニーズにも応えるつくりになっている。
また、店内には、店舗ロゴと女子を意識した可愛らしいイラストを背景にしたフォトスポットの設置や、#ワークマン女子のマスコット「わくこ」がキャンプを楽しむ様子を表現した展示など、SNSを意識した工夫が随所に施されている。もともと#ワークマン女子という単語自体がSNS上で自然発生したという経緯を踏まえ、ネットでの拡散や話題性を強く意識しているようだ。
高機能で低価格、人気を集めるワークマンの一般向け商品
今回ソラマチ店で取り扱う注目のアイテムは次の通りだ。
東京ガールズコレクションにも登場した「ブリザテックレインジャケット」(5800円:以下全て税込)は、高い耐水性と透湿性を低価格で実現したレインウェア。ユニセックス商品で、オレンジとカーキの2色から選べる、男性にも女性にも人気の商品だ。
「トランスフォームアノラック」(1900円)は、ピンクなど華やかなカラーリングを展開する女性向けウェアで、不要時は付属のボディバッグに収納して持ち運ぶことができる。すぐれているのはボディバッグが本体と一体化しており、着用中も収納袋が邪魔にならない点だ。
また、男性向け商品で人気を博しているのが「SOLOTEX(R) リバーシブルジャケット」(2900円)だ。耐久撥水加工のされた汚れにも強い生地で、作業服とスーツをリバーシブルで切り替えることができる。夏向けの商品として、通気性を高めた「Dot Air(R) リバーシブルジャケット」(2900円)も4月から販売する。
ほか、走りやすさを追求しソールの前後に硬さの違う素材を採用した「アスレシューズ ハイバウンス ドリブンソール」(1900円)、ビビッドカラーが特徴のレインウェア「レインジャケット STRETCH Perfect」(2900円)なども既存店では人気のアイテムだという。
カギを握る「アンバサダー」の存在
もともとは建築現場などで働く職人向けに作業服などを販売していたワークマンが、一般向けの商品を開発するようになった背景には、SNSの存在がある。作業服として販売していた商品がSNS上で話題になり、キャンプなど別の用途に便利だと人気を集めるようになったのだ。
一般向け商品の開発にあたってワークマンが取ったのは、「アンバサダー」と協力するやり方だ。「アンバサダー」とは、もともとSNS上でワークマンの商品について積極的に発信していたいわばインフルエンサーのうち、商品開発に協力している人々のことだ。アンバサダーはドッグトレーナーや猟師、キャンパーなどさまざまな背景を持っており、「もっとこうだったら便利なのに」という声をワークマン側が吸い上げて商品化する。たとえば、ネット上で話題になったキャンプ用ウェア「コットンキャンパー」(2900円)は、もともと鉄鋼業の職人向けの難燃性の作業服が元になっている。これをアンバサダーの意見を元に、キャンプ向けに改良したことで人気を呼んだ。
ポイントは、企業側に忖度した意見がでることを防ぐために、アンバサダーには無償で協力してもらっている点だ。その代わり、基本的にはアンバサダーの意見をほぼ「丸呑み」した商品開発を行う。ユーザーとして集約された意見を持ち、SNSなどでも発信力の高いアンバサダーと協力することで、今まで共同開発した商品はすベて成功を収めているという。
トータル1500店舗をめざすワークマンの出店戦略は?
21年3月現在、ワークマンは「ワークマン」業態632店舗、「WORKMAN Plus」269店、「#ワークマン女子」2店舗の計903店舗を運営している。今後はそれぞれの立ち位置をより明確にし、業態割合を大きく変化させていくという。
まず、もともとの顧客層である職人をターゲットにした「ワークマン」は200店舗程度まで縮小。その分ファミリー・一般向けの「WORKMAN Plus」と女性向けの「#ワークマン女子」を増やし、トータルでは1500店舗程度まで拡大していく予定だ。6月には#ワークマン女子初の路面店を千葉県・柏市をオープンさせるほか、大都市のターミナル駅付近のショッピングモールに年間6店程度コンスタントに出店を続け、#ワークマン女子は今後10年で400店の新規出店をめざす。