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ワークマン新業態がオープン、時間帯によって店内演出を変更する“二枚看板店”

作業服専門店のワークマン(群馬県/小濱英之社長)は319日、埼玉県さいたま市にある「WORKMAN さいたま佐知川店」を「WORKMAN Plus さいたま佐知川店」(以下、さいたま佐知川店)に改装オープンする。同店はワークマン初の“二枚看板店”で、建設現場の作業員などの「プロ客」と一般客それぞれが来店の多い時間帯に合わせて、看板や内装を変更するという新しい取り組みを実施する店舗だ。

店舗の演出を変化させ、商品の見せ方を変える!

 さいたま佐知川店がリニューアルオープンする前日の318日、ワークマンはマスコミ向けの新戦略発表会を実施した。同社は同店を新業態「W’s Concept Store」の1号店と位置づけ、新たな店舗戦略を明らかにした。

 W’s Concept Storeで特筆したいのは、1日のなかで時間帯に応じて看板や内装を変化させている点だ。建設現場の作業員などの「プロ客」が仕事の前後によく来店する700100016:3020:00は「WORKMAN」として、一般客が多い10:0016:30は「WORKMAN Plus」として営業する。看板の切り替えには、野球場などで使用されている「トライビジョン」方式を採用。「WORKMAN」「変身中」「WORKMAN Plus」の3種類の表示を切り替えることができる。「変身中」は店内の「見せ方」を変更している最中に使用する。

外の看板は時間帯に応じて切り替わるようになっている

 店内もそれぞれの客層に合わせたものに変更する。プロ客向けには、店内中央奥のマネキンが乗っている画面に表示する映像を高所作業にし、その両脇に配置したモニターには作業服を映し出す。照明はプロが働く過酷な使用環境に耐えうる商品を分かりやすく伝える昼光色を採用し、入口近くに設置したディフューザーの香りは仕事でやる気が出るようにミントのような清涼感のあるものを使用する。音楽はロックやインディーポップを中心に、モチベーションを喚起するような楽曲をセレクトした。

店内のマネキンが乗っている画面は、プロ向けには高所作業の映像を映し出す

 一方、一般客向けには、店内中央奥のマネキンが乗っている画面に表示する映像をボルダリングにし、その両脇に配置したモニターにはアウトドア・スポーツウェアを映し出す。照明は落ち着いた雰囲気を演出する暖色を採用し、香りはベルガモットや紅茶のようなリラックスできるものを使用する。音楽はミディアムテンポのアコースティックナンバーを中心に流す。なお、取り扱う商品の変更は行わず、あくまで商品の見せ方を変えるねらいだ。

一般客向けには、ボルダリングの壁を映し出す

どの客層にとっても「自分の店」だと思えるような店舗

 ワークマンがさいたま佐知川店でこのように看板や内装を変化させるのは、「WORKMAN Plusで販売しているのと同じ商品をWORKMANでも100%購入できること」を一般客にアピールするためである。同社では、2018年から一般向けの高機能ウェアを中心に取り扱う「WORKMAN Plus」が好調に推移しているが、WORKMANWORKMAN Plusで取り扱っている商品が異なると思っている一般客が多いという。今回の取り組みを通じて、WORKMANの既存店へも一般客の来店を促したい考えだ。

 その一方、既存のWORKMAN店舗の一部の顧客からは「自分たちのWORKMANが変わってしまった」との声もあったという。「一般のお客さま・プロのお客さまの双方にとって『自分の店』だと思えるような店舗をつくりたかった」(ワークマン専務取締役の土屋哲雄氏)。まったく同じ商品でも、見せ方を変えることにより、プロ客には9割の、一般の男性客には7割の、一般の女性客には5割の製品が自分の購入対象に見えることを想定しているとのことだ。なお、さいたま佐知川店では、駐車場のフル回転を前提に初年度の売上目標を3億円に設定している。

女性向けのSサイズ商品を約2倍に

 今回の新戦略発表会では、2020年春夏の新商品も多数紹介された。なかでも注目したいのが、女性向け商品の強化だ。商業施設などに出店したWORKMAN Plusでは、女性客の比率が半数を超えているという。これを受け、路面店でも女性専用製品の売場を拡充するほか、主力のユニセックス商品でも、女性向けのSサイズを19年の35アイテムから20年では79アイテムに拡充する。また、199月からは、著名の女性ブロガーとのコラボ企画「ワークマンアンバサダープロジェクト」を開始しており、今後も女性目線の意見を積極的に取り入れ、商品開発に生かしていく考えだ。

商業施設に出店したWORKMAN Plusの女性客増を受け、路面店でも女性客向けの売場を拡大する

 今後はさいたま佐知川店での動向を見ながら、今回の取り組みを新店や既存店の改装店舗で部分的に取り入れていく考えで、同店とまったく同じような店舗を水平展開するわけではないという。あくまで商品の見せ方を工夫するための実験を行う店舗の位置づけのようだ。