東北や北関東で食品スーパーを展開するヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)は2023年1月27日、福島県郡山市に「ヨークベニマル桑野店」(以下、桑野店)をオープンした。同店の大きな特徴は、若い世代を主要ターゲットにした商品政策(MD)だ。本稿では、そのなかでも総菜売場にフォーカスして解説する。
若いマネージャーを中心に店づくり
東北新幹線・JR各線「郡山」駅からクルマを走らせること約15分。桑野店は郡山市の中心市街地に位置する。もともとこの地には同名の旧桑野店が約42年間営業していたが、老朽化等の理由により21年11月に閉店した。スクラップ&ビルドにより約1年2カ月の歳月を経て、当日は予定時刻よりも30分ほど早く開店。“最強寒波”の余波が残る氷点下の厳しい寒さのなか、新たなスタートを切った。
桑野店の売場面積は2206㎡。旧店と比較すると約1.7倍に拡大している。ヨークベニマルが運営するショッピングセンター(SC)「ヨークタウン桑野」の核店舗としての出店で、同SCにはクリーニング店(桑野店と同日オープン)のほか、「無印良品」(23年3月1日開店予定)が入居する。
同店の取り扱い商品数は1万4170SKU。売場面積が拡大したことで、全体の2割ほどが新しい商品だという。日常遣いの商品から「ちょっとおいしいもの」まで幅広い品揃えを提供している。
また、桑野店ではZ世代やミレニアル世代といった若年層に合わせたMDに注力。「真船社長と30代前後の若いマネージャーたちが中心となって、コンセプトや品揃え、売場づくりを練っている」(大髙善興会長)という。
洋風・アジアンメニューを強化
とくに注目したいのが総菜売場だ。ベーカリーや寿司も含め、合計270SKUを取り扱う。若い世代に人気が高そうな商品を多数展開しており、なかでも力を入れているのが店内製造する「レストランデリ」と「アジアンデリ」の2つのカテゴリーである。
洋風メニューを中心とする「レストランデリ」では、「自社製ミートソースのラザニア」(680円:以下、本体価格)や「ミートソースのチキンチーズ焼き」(780円)など、付加価値の高い新商品を多数導入している。「手間はかかるが、品揃えで競合との差別化を図るため、料理モノのメニューを強化した」(総菜担当者)。
アジアンメニューを展開する「アジアンデリ」では、「自社製肉味噌パッタイ」(398円)や「野菜を食べる! レバニラ炒め(中)」(457円)などを新発売。従来、中華総菜は肉団子や焼売、餃子が中心だったが、多様なアジアンメニューを品揃えすることで差別化を図っていきたい考えだ。
また、オードブルでも揚げ物一辺倒からの脱却を図り、彩り豊かな洋風の「ビストロオードブル(S)」(1380円)や「アジアンオードブル(S)」(1680円)なども取り扱う。
そのほか、桑野店では新たなMDとしてセンター加工の「シェフのひと仕事デリ」を導入。「以前よりワンランク上の商品をめざして、味付けや原料を変更した」(総菜担当者)という。「リングイネのボローニャ風ミートパスタ」(498円)や「ユッケジャンクッパ」(398円)など多様なメニューを展開する。
生鮮各部門が連携してつくる総菜も
桑野店では、生鮮各部門が連携して製造する生鮮総菜にも力を入れている。一部の店舗で導入が始まっている、生鮮総菜の加工専用の作業場をバックヤードに設け、「たことミニトマトのマリネ」や「炭火焼ローストビーフポテトサラダ添え」(いずれも298円)など、複数の生鮮部門の新鮮な素材を組み合わせたおしゃれな「カップデリ」を展開し、おつまみ需要に対応する。「部門の横ぐしを通して初めて、お客さまの求める商品を具現化できるようになった」(商品開発担当者)という。
生鮮各部門の連携では、「たらのイタリアン蒸し」(398円)や「豚バラ肉のスパイス蒸し」(298円)など、電子レンジで数分温めるだけで食べることができるレンジアップ商品も展開している。
大髙会長は「思い切って新しいMDに挑戦しており、私の期待をはるかに超える感動があった」と桑野店の取り組みを高く評価している。桑野店は、ヨークベニマルが従来の考えにとらわれず、さまざまな新しい試みに取り組んだ店舗であるようだ。