スポーツ用品販売大手のアルペン(愛知県/水野敦之社長)が生まれ変わろうとしている。2018年4月にオープンした「Alpen Outdoors春日井店」(愛知県春日井市)の成功を皮切りに、アウトドア専門店を続々とオープンさせている。なぜアルペンの新業態はどの店舗も大盛況なのか——。
アルペンの起死回生の一手!
アウトドア専門店が大盛況
「客数、売上ともものすごくいい数字です」
アルペン常務執行役員の二十軒翔(にじっけん・しょう)氏は頬を緩めた。その「ものすごくいい数字」を叩き出しているのが、「Alpen Outdoors(アルペンアウトドアーズ)」という、アルペンのアウトドア専門店だ。
アルペンは2018年4月に愛知県春日井市で新業態のアウトドア専門店をオープンして以来、フレスポジャングルパーク店(鹿児島県鹿児島市)、京都宇治店(京都府宇治市)、宇多津店(香川県綾歌郡)と立て続けに出店。4月19日には世界最大規模となる2300坪の旗艦店舗「Alpen Outdoors FLAGSHIP STORE柏店」(千葉県柏市)にオープンした。同社はアウトドア専門店(「Alpen Mountains」も含む)を今年6月までに8店舗出店する計画だ。
この1年で出店したアウトドア専門店はすべて業態転換による。転換前と比べて、客数、売上がともに大幅に改善しているだけでなく、「もっとこういう店舗を出してほしい」という声が各地で上がっているという。
アルペンは主力としているウィンタースポーツやゴルフ用品販売の不振により、苦戦が続いていた。直近の19年6月期の第2四半期決算では、売上高が対前期比1.5%減の1117億円、営業利益が同94.1%減の1億円で、かろうじて営業黒字を保つことができた。アウトドア専門店はまさに起死回生の一手といえる。
では、なぜアルペンのアウトドア専門店に人が集まるのだろうか。初の旗艦店である柏店を見てみよう。
次ページは
SNSでも話題の体験型アウトドアショップとは?
SNSでも話題に!
体験型のアウトドアショップ
2300坪という世界最大規模の売場面積で、450のブランド、10万点を品揃え。
この数字を聞いただけでも「すごそう」な感じである。しかし実際に店舗を見ると、これまでのアルペンの店舗だけでなく、他社のアウトドア専門店とも一線を画していることが一目瞭然だ。
驚きは店内に入る前から始まる。店舗の外に広がるガーデンエリアには、アウトドア用品メーカーのスノーピーク(新潟県/山井太社長)が手掛ける「Snow Peak Cafe」を展開。デザインは世界的建築家である隈研吾氏が担当した。さらに、店内で販売している商品を使った「バーベキュー・グリル実演会」や「くんせい作り実演会」も行い、実際に商品を試すことができる。
ワクワクした気持ちで店内に入ると、アウトドアの世界観に圧倒される。木目調の什器にブラックを基調とした空間が広がる。1階にある80坪の「ウッドデッキ」コーナーには、約10針のテントが張られており、チェアやバーベキューセット、ランタンなどの商品を組み合わせ、実際のキャンプシーンを想起させている。テントの設営が体験できるスペースもある。
ほかにも、2階、3階には子供が遊べるキッズコーナー、アウトドアトイを体験できるゾーン、3Dの足型分析マシンなどを導入している。
まさに、モノを売っているだけでなく、「体験」できる場所となっている。SNSには「今日は雨でキャンプに行けないから、アルペンアウトドアーズに行く」という書き込みがあったと二十軒氏は紹介した。
アルペンは今後も、アウトドア業態の出店を急ぐ。同社の水野敦之社長は、「アウトドアを一過性のブームではなく、文化にしていきたい」と抱負を語った。