ロカボで「糖質疲労」を解消、小売業の売上拡大にも貢献!
脂質とたんぱく質を控えることは逆効果
山田氏がロカボを提唱して以来、「緩やかな糖質制限」という食べ方が広く知られるようになったものの、栄養学の古い情報や誤解にとらわれて糖質疲労を招いているケースがある。
その一つが「脂質を取り過ぎると体に悪い」という思い込みだ。確かに、1950~70年代にはそうした概念が提唱されたが、油脂を控える食事法は無意味だったことが2008年に明らかになっている。
「実は、脂質とたんぱく質にはそれぞれ独立した機序で食後高血糖を予防・是正してくれる力があるのです。だからこそ、ロカボでは脂質とたんぱく質をしっかりとることをポイントにしています」(山田氏)
脂質やたんぱく質を摂取すると、満腹感をつくるホルモンが長く分泌される一方で、空腹感をもたらすホルモンは長く抑制されるので、結果として満腹感が長続きする。逆に糖質は、空腹感をもたらすホルモンを抑制する作用が弱いため、お腹いっぱい食べても小腹が空きやすいことが科学的に証明されている。
加えて、日本人は世界的に見てもたんぱく質不足の傾向が強い。国民健康・栄養調査のデータによると、日本人のたんぱく質摂取量は少なく、2000年頃から低下し、1950年代の水準まで下がっているといわれている。こうした状況が糖質疲労に拍車をかけているといっても過言ではない。
「カロリー制限にしばられて、脂質やたんぱく質をとらないのは糖質疲労を予防・解消するうえではかえって逆効果。脂質やたんぱく質、食物繊維をしっかりとり、『カーボラスト(=糖質を最後にとる)』を心がけることが、血糖値の上昇を抑えることに効果があるのです」(山田氏)
三方よしの社会を実現するロカボを普及するために
山田氏が率いる食・楽・健康協会では、ロカボマークに続いて21年に新基準としてロカボプラスマークを誕生させた。
これは、従来のロカボマークで規定された糖質量の条件に加え、たんぱく質や脂質、食物繊維など5つの条件のうち1つ以上を満たした商品に付与されるものだ。そのため、ロカボプラスマークの商品を選べば、糖質を抑えながら、不足しがちな栄養素もとることができる。すなわち、糖質疲労を解消するためにロカボの食べ方を実践するうえで強い味方となる。
「私たちがめざすのは、おいしく楽しく食べて健康になる社会です。薬に頼るのではなく、食べることで健康になる。それは、ロカボを実践すれば可能なことです。糖質の量だけ気にしていれば、肉も魚も油もお腹いっぱい食べていい。言い換えれば、小売業の方々が肉や魚や油をたくさん売ることによって、多くの人が健康になり、医療費削減につながる。それは小売業の売上拡大をもたらします」(山田氏)
売り手も買い手も世の中も幸せになる、三方よしの社会がロカボによって実現できる。そう力を込める山田氏は、今自治体とも連携してロカボライフの推進に取り組んでいる。

「ロカボは子供からお年寄りの方まで、誰にとってもメリットのある食べ方であり、1人でも多くの方が実践してくださることを願っています」(山田氏)