糖質、カロリーをコントロールしたいニーズは拡大中、ロカボ市場拡大のためのポイントとは?

文:児玉 一穂(日本食研ホールディングス株式会社 食未来研究室室長)
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ロカボ商品を男性向けに強化

 糖尿病患者の性別構成比を見ると、興味深い傾向が浮かび上がる。通院している糖尿病患者の61.7%が男性であり、これは全疾患の通院者における男性比率46.4%を大きく上回っている。つまり、糖尿病はとくに男性に多い疾患であることがわかる【図3】。

【図3】通院者の性別構成比

 しかし、現状のロカボ市場では男性の購買率が低いという課題がある。スーパーでロカボ商品を購入する男性の割合は18.6%にとどまっており、スーパー食品全体の男性利用率19.8%を下回っている。この数字は、男性向けロカボ市場にまだ大きな成長の余地があることを示唆している。最近の傾向として注目すべきは、ロカボを謳ったカップ麺の売上が伸びていることだ。このカテゴリーでは男性の購入割合が22.6%と、全体平均を上回っている。このことから、総菜やレトルト商品など男性が好むカテゴリーでロカボ商品を増やしていくことが、市場全体の拡大につながる可能性が高いと言える。

ロカボ商品ユーザーの特徴からみる、市場拡大のポイント

 ロカボ商品ユーザーがふだんどのような商品を購入しているのか、購買行動を分析すると、健康的な食品全般に対して支出が高いことがわかった。とくに、タンパク質や食物繊維を含む食品の購入が多い傾向にある【図4】。

【図4】栄養成分別点数PI値と特化度

 この傾向を反映してか、最近のロカボ商品は単に低糖質であることだけでなく、「低糖質×高タンパク」など、複数の健康訴求点を組み合わせた商品が増えている。消費者はより効果的に糖質をコントロールできる商品を求めており、健康感をより強く訴求できる商品開発が望まれている。

 ロカボ商品の月別の売上構成比を見ると、食品全体と比べて1~5月が高くなっており【図5】、これは正月太りの解消や夏に向けた体形改善といったニーズを反映していると考えられる。一方で12月のようなホームパーティーや帰省で食品の消費が増える時季には売上が落ち込む傾向にある。健康訴求だけでは持続的な市場拡大は難しく「おいしさ」も重要な要素となっており、実際、監修市場がここ数年で3倍に拡大するなど、専門家の監修によりおいしさが担保された商品が人気を集めている。また、消費者の嗜好の変化も見逃せない。炭火焼」や「燻製」といった調理法であったり、「ASMR動画」の流行により食感への関心が増してきている。

【図5】ロカボ商品の月別売上構成比

 これらの傾向を踏まえると、今後のロカボ市場拡大のポイントは以下のようにまとめられる。

  1.  男性向け商品の強化:とくに男性が好むカテゴリーでのロカボ商品開発
  2.  複合的な健康訴求:低糖質に加え、高タンパクや食物繊維など、複数の健康要素を組み合わせた商品設計
  3.  季節性を考慮した販促:正月明けや夏前など、消費者の健康意識が高まる時季に合わせたマーケティング
  4.  おいしさの追求:健康面だけでなく、味や食感にもこだわった商品開発
  5. 専門家の監修:信頼性と品質を担保するための専門家との協力


 ロカボ市場は今後も拡大が見込まれる有望な分野だ。しかし、単に低糖質であることだけでなく、消費者のニーズや嗜好の変化に柔軟に対応し、健康とおいしさを両立させた商品開発が求められている。これらのポイントを押さえた戦略を展開することで、ロカボ市場のさらなる成長が期待できるだろう。

文=日本食研ホールディングス株式会社 食未来研究室 室長 児玉一穂
食未来研究室ホームページ : https://nsk-shokumirai.com/

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