幅広い家庭で楽しめる!ひな祭り時期、ヤオコーに学ぶ催事提案

アイダスグループ代表:鈴木 國朗(アイダスグループ代表)
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コロナ禍が収束した後も、外食需要は回復しきらず、自宅でちょっとした贅沢を楽しむ「おうち需要」は一定程度、定着していると言われている。そうしたなか、食品スーパー(SM)では、季節催事や週末の食卓提案に好機があると言えるが、各社の状況をみると工夫の余地がある。そこで、全国のSM企業が注目するヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)のひな祭りの取り組みを好事例に、SM各社に実践していただきたい季節催事の提案について解説する。

季節催事はSMの存在意義を発揮できる

 はじめに、SMにとって季節催事の提案に取り組むことの重要性について述べたい。まずは前述したように「おうち需要」の定着により需要獲得の好機があることだ。次に、自社の商品政策(MD)や商品開発力の底上げにつながるからだ。季節催事は、食シーンが明確で、需要も集中するため、打ち手の考案、実行、効果検証が可能だ。季節催事から、通年で応用可能なアイデアが生まれることもある。たとえば、節分の巻き寿司、ひな祭りのちらし寿司などは、そのメニュー自体は年間を通じて提案できるものである。季節催事でヒット商品が生まれたら、旬に応じてアレンジを加え、ハレの日のメニュー等で展開していきたい。

ちらし寿司のイメージ
SMにとって季節催事の提案に取り組むことの重要性について述べたい。(写真はイメージ karinsasaki/istock)

 また、季節催事は食文化の継承を担うことにもつながる。人手不足が深刻化するなか、省力化が求められ、提案に時間を割くことが難しくなりつつある。そうしたなかでも食文化の継承は日常の食卓を支えるSMの使命であり、他業種とは異なる存在意義を発揮できる取り組みでもある。

 では、どのように季節催事に取り組んでいくべきか。続いて、押さえておくべき基本を述べておきたい。

 まずは、前年の実績や傾向、反省をしっかり踏まえて打ち手を考えることだ。押さえておきたいのが、需要が集中する催事前日、当日の曜日である。土日の場合は客数が圧倒的に多く、また平日よりも時間的余裕があることから自宅で手づくり派が増える。たとえば、節分やひな祭りでは、出来合いの巻き寿司やちらし寿司と、自宅で手巻き寿司やちらし寿司を調理するための材料との購買比率が大きく変わる。

 次に、季節催事に必要とされる売れ筋商品の店頭在庫数量を増やして、販売を強化することだ。たとえばバレンタインデー前には、手づくり派に向けて、製菓材料売場では通常時よりも揃えるべき商品が増える。製菓用チョコレートのほか、アレンジのためのチョコペンやトッピング類、ゴムベラなどの調理器具、贈答用のラッピングも必要だ。当たり前のように思えるが対応できていない店は少なくない。

 そしてもう1つは消費者の経済状況や、自社の利用傾向を踏まえることだ。たとえば現在は購入単価が上昇傾向にあるものの、客数は減少傾向である。消費者の財布の紐は決して緩んでいるとは言えない。こうしたなか季節催事では、ハレの日の提案ではあっても、付加価値を訴求した高単価の商品よりも、値ごろを押さえた商品に重点を置くべきである。

気分を盛り上げる丁寧な売場づくり

 こうした季節催事の基本を踏まえて、今年の3月3日(日)のひな祭り当日、首都圏の有力チェーン3社の比較調査を実施した。結果、現場の人手不足もあるのか季節催事の提案に手が回りきっていない印象を受け、業界の先進事例として紹介するほどの創意工夫が見られたのはヤオコーのみであった。そこで今回はヤオコーの優れた取り組みから、SMがめざすべき季節催事について解説していきたい。

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