ヤオコーが連結子会社化! 異色のローカルスーパー「クックマート」とは何者か?
ヤオコー(埼玉県)が持株会社制に移行するかたちで10月1日に設立・上場したブルーゾーンホールディングス(埼玉県)は同日、文化堂(東京都)の完全子会社化とデライトホールディングス(愛知県:以下、デライトHD)の連結子会社化を発表した(株式譲渡実行日は文化堂が10月16日、デライトHDが10月31日:いずれも予定)。新たな経営体制のスタートと同時に、有力ローカルチェーンのM&A(合併・買収)を明らかにするというサプライズを仕掛けたかたちだ。このうちデライトHDは、愛知県と静岡県で圧倒的な集客力を誇る食品スーパー「クックマート」を展開する企業。どのような経営戦略で成長を果たしてきたのか。本稿では『ダイヤモンド・チェーンストア』2024年7月15日号で掲載した、同社白井健太郎社長のインタビューを再掲する。※内容はすべて当時のもの
自社の個性を見出し、コンセプトとして言語化
──クックマートは、直近の5年で店舗数がほぼ横ばいにもかかわらず、売上高を伸ばし続けています。

●1980年愛知県豊橋市生まれ。明治大学商学部卒業後、インターネット広告、キャラクタービジネス、映像制作、観光プロモーション、クリエイターのエージェントなどを経験。2010年デライト関連会社である食品卸問屋に入社。2012年デライト入社。2017年より代表取締役社長。今までのスーパーマーケット業界の常識にとらわれず、「楽しさ」「内発的動機」を中心とした「人を幸せにする新しいチェーンストアの創造」をめざしている
白井 売上高を既存店ベースで伸ばし続けているのが特徴です。2023年度には既存店売上高が対前期比約7%増と伸長し、売上高は337億円となりました。
クックマートは、1995年に創業した業界でも後発のSMです。だからこそ変に大手SMを真似せず、マイペースに、できないことは捨て、むしろ自社の強みに集中するアプローチを採ってきました。
経営学者の楠木建先生(一橋ビジネススクール特任教授)が「違いには違いがある」とおっしゃっていて、この言葉がとても好きです。それはすなわち、「違い」には「ベター(better:程度の違い)」と「ディファレント(different:種類の違い)」の2種類があるということです。
SM業界では同じ土俵で自社と他社を比較し、どちらが「ベター」かを競い合う傾向が強いと感じています。しかしそれは究極のところきりがありません。
対して、自社のコンセプトに基づき、自社のよさを生かすために必要なことをやり続けていくと、売場や商品といった表層の部分だけでなく、深層の組織文化や人事制度も独特になっていきます。それは他社と比較できるもの(ベター)ではなくまさに「別物」=「ディファレント」になるということ。自社独自のコンセプトを見出し、自社の気質や体質に合うことをやれば、おのずと「ディファレント」な存在になるような気がします。
──クックマートの独自性は、いかに培ってきたのでしょうか。
白井 2012年に私が入社した当時、クックマートはすでに7~8店舗で売上高180億円を稼ぐSMでしたが、「なぜ強いのか」について自己認識が弱い面がありました。
そこで、外部から来た私がやったのが自社の個性を観察して言語化し、理念やコンセプトとしてまとめることです。結果、自社の特性をより自覚でき、さらに強めることが可能になりました。
自社の個性や強みを言語化するのは簡単なことではありませんでした。「なぜクックマートには多くのお客さまが来店し、盛り上がっているのか」という本質を、何度も何度も社内を観察しながら考えました。そのうちに、効率的なオペレーションで売場に従業員が少なく、無機質な印象を受ける他店に比べて、クックマートは「活気がある」ことがいちばんの違いではないかと気づきました。
さらに「活気とは何か」を分解しました。私の理解では、「人が多い」「密度が高い」「自然体」ということです。クックマートは客数だけでなく従業員も多い。比較的コンパクトな売場に多くの人が集い、賑やかに商品が並び、祭りのような高揚感が生まれている。「マニュアル接客」はなく、ローカルの普通の人々が自然体で日常使いのお店をつくっている。その「楽しさ」が「活気」の正体であると感じ、そこを強めていこうと考えたわけです。







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