2023年の販促 データを駆使してお客の動向を見極め、適切な販促を打つ方法とは
コロナ特需が終えんを迎え、食品スーパー(SM)は真の実力が試されるフェーズに入っている。値上げ基調の中で消費者の生活防衛意識はさらなる高まりを見せ、2023年のSMの経営環境の見通しは厳しい状況だ。そうした中でSMはどのような販促戦略を打ち出すべきか。ヨークベニマル(福島県)を経て、現在は食品小売業のコンサルティングを手掛けるマルダ代表取締役の渡辺太郎氏にポイントを解説してもらった。
ハレの日の過ごし方とメニューに変化の兆し
最初に2022年を振り返ると、巣ごもり需要の高まりとともに“特需”に沸いた21年の反動に加え、物価上昇や水道光熱費の高騰なども重なり、SM各社の業績は伸び悩んだ。
一方、コロナウイルスの感染状況は逼迫と落ち着きを繰り返しつつ、着実に「アフターコロナ」の世界へと移行。生活様式は徐々にコロナ禍前へと戻りつつある。ただ、物価や水道光熱費など生活コストが重くのしかかる中で、消費者の生活防衛意識は高まる一方でもある。23年は、こうした厳しい環境下でいかに集客を図るかという難題に挑まねばならない。
そんな23年の販促施策を検討するうえで、まずはコロナ禍を経た消費行動の変化について言及しておきたい。筆者が代表を務めるマルダでは過去20年近く消費者の生活調査を行っているが、コロナ禍に入ってから大きく変化したのは、季節イベントの食卓での「実施率」である。
たとえば21年上期の食卓での実施率で前年を上回ったのは「ひな祭り」と「土用の丑の日」のみだった。コロナ禍で大人数が集まるイベントが忌避されたこと、在宅時間が増加する中での“料理疲れ”など理由はさまざまあるが、いずれにしてもコロナ禍前と比較して、多くの季節イベントでいわゆるハレの日メニューをつくって楽しむという動きが低迷した。今年に入って以降は復調の兆しもあるが、コロナ禍前の水準には戻り切っていない。
ハレの日のメニューそのものにも変化が生じ始めている。たとえば正月の定番といえばおせちだが、昨今は焼き肉や寿司といった通常のハレの日メニューを楽しむ家庭も増えつつあるようである。習慣にとらわれずに皆が好きなメニューを楽しみたい、というニーズは今後も拡大していくかもしれない。
これらのことから、今後は、これまでのように季節イベントをねらった販促に力を入れ、大きな売上を獲得するということは徐々に難しくなっていくことも予想される。それよりも、自社・自店がふだんから提供している商品の品質の高さやおいしさをイベント時に訴求し、そこから日常使いしてもらえるよう誘導するかたちに移行するほうが得策かもしれない。つまり、季節イベントにかかわる特定の商品の瞬間風速的な売上に依存するのではなく、月ごとの売上を高いレベルで平準化していく、そのための販促に工夫を凝らすということがより重要になっていくと考える。
とはいえ、すべての季節イベントやそれに関連したメニューが低迷しているわけではない。たとえばハロウィンのカボチャメニューや、クリスマスのチキン、節分の恵方巻きなどは、堅調な販売動向を示している。これらについては、たとえば外食企業や有名シェフとコラボレーションしたメニュー開発を推進するなどして、他社と変化をつけた販促を展開することも一案だろう。
高まる「個店販促」の意義
販促施策を考えるうえでは
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