食品スーパーで人気の「直輸入ワイン」 ワインのプロが流通の仕組みを解説!
小売業が直輸入を取り扱うメリットと注意点
では、小売店が直輸入ワインを販売する利点はどこにあるのか。自社で輸入機能を持つ場合も輸入代行を使う場合も、小売店が直輸入を行う目的は2つに大別される。その1つが「低価格の訴求」だ。
先述したインポーターと小売店のあいだには、本来であれば問屋(場合によっては二次問屋も)が介入する。そうした問屋取引を省略することで低価格を実現できるわけだが、問屋を介さないことのリスクもある。
たとえば、仕入れた商品がヒットしなかったり、あるいは仕入れ前のテイスティングと味が異なったりする場合もある。そのため外部のプロフェッショナルな輸入者から仕入れたほうが結果的にコストを抑えられる場合もある。
もう1つの目的が、「ほかにはないこだわりの訴求」だ。直輸入商品の利点は商品を自由にハンドリングできる点にある。ただその場合は、商品の開拓能力が必要不可欠だ。「ソムリエ」「ワインアドバイザー」などの資格を持っているだけでは不十分で、ワインの品質だけではなく、トレンドや売れ筋を見極める能力が必要となる。また、ワイナリーとのつながりを持った、現地のプロフェッショナルとのコネをどうつくるかも重要だ。
ワインの資格といえば、日本では「ソムリエ」が知られているが、ワイン業界では「マスター・オブ・ワイン(MW)」も権威のある資格と言われている。日本人では現在、MWの有資格者は1 人しかいない。一方、欧米では企業規模の大小にかかわらずMWを持ったバイヤーがいるスーパーもある。このように日本と欧米とではバイヤーの能力に大きな差があるのが現状だ。直輸入ワインを展開する、もしくはこれから展開したいと考えている小売業にとっては、バイヤーの能力開発は大きな課題になるだろう。