巣ごもり需要で始まった「おうちお好み焼きブーム」は物価高で止まったのか
あえて特需をスルー 青のり最大手の「正直経営」にネットざわつく
お好み焼きに彩りと風味を添える青のりも特需の恩恵を受けたかといえば、さにあらず。
青のり国内最大手の三島食品(広島市)は2022年が青のり発売「51周年」に当たる。原料となる徳島・吉野川産スジアオノリの収穫量が激減したため、2020年6月に「青のり」の製造を休止していた。
代わりにスジアオノリよりも劣るものの比較的調達しやすかったウスバアオノリなどを用いて「あおのり」として約1年半販売した。パッケージデザインも従来品のブルーではなくグリーンを基調とし、商品名も「かな」表記で区別した。さらに、代用品である「あおのり」のPRや販売拡張をあえて行わない営業戦略を堅持し、スジアオノリが確保できるまで「青のり」の休売を徹底した。
同社は前後してスジアオノリの陸上養殖に取り組み始めていた。高知県室戸市が設置した「室戸海洋資源開発センター」の指定管理者業務を2015年から継続しており、陸上養殖のノウハウを積み上げてきた。2020年からは広島県福山市の走島に自社の養殖施設を設けて自社生産できる体制を構築した。
天然物の収穫も徐々に回復し、自社生産による原料と合わせて生産できる見通しが立ったことから2021年11月に販売を再開したが、外出制限も緩和しており、お好み焼きブームは収束していた。
恩返しのステルス“値下げ”
それでも、休売してまで原材料にこだわった同社のスタンスを、消費者は好意的に受け止めていてSNSでも「いいね」やリツイートが伸びた。
ブームには間に合わなかったが、外的影響を受けずに自社で原材料を調達する体制と消費者の信頼を勝ち取ったのだ。
三島食品は2022年12月末まで「青のり51周年キャンペーン」を実施し、「青のり」の巻き返しを図っている。
「正直な経営をしないと回り回って自分たちに返ってくる」という創業者の行動指針を踏まえた社風が根付いていて「今回もバカ正直にこのようなメッセージをパッケージに書いたところ、たまたまお客様の目に止まり、予想もしない好評、共感をいただきました」(同社広報)。
「青のり」は通常、袋入りタイプの内容量が2.2グラムで希望小売価格が226円(税別)。価格を据え置きでボリュームは3gに増えるという、異例の“ステルス値下げ”を行っているのだ。
「青のり」の休売期間中、同社には励ましの手紙やSNSでの応援が届いた。その恩返しの意味も込めて年内いっぱい「青のり51周年キャンペーン」を続ける。