スーパーに卸売りする理由は? 「オーガニックはまち」の養殖でくら寿司がめざすものとは
今後の展開と「オーガニックはまち」が目指すもの
「オーガニックはまち」は、21年12月に初回の50tが出荷される見込みだ。まずは国内のくら寿司各店舗で寿司ネタとして提供し、その後は食品スーパー(SM)への卸売りや海外店舗での展開を検討、それに伴って生産拡大を推し進める。また、鯛やサーモン、カンパチなど、他の魚種でもオーガニック養殖を展開する見込みだ。
しかし、前述の通りオーガニック養殖は、クリアするべき基準が多い。現状では、「オーガニックはまち」は通常のはまちに比べて養殖コストが高いため、寿司ネタとして提供する場合には通常のはまち一皿110円(税込)に対し、220円(同)での提供を予定しているという。今後は、一つの生簀に対して1日200kg、2~3人の人手が必要な餌やりを自動化・最適化するAIを搭載した自動給餌機の導入などでコスト削減を行い、徐々に生産量を伸ばしていきたい考えだ。
また、SMへの卸売りについては、「日本のオーガニック水産物市場はまさに始まったばかり。一般に流通、普及させることで日本の漁業の活性化や発展に繋がると考えている」(黒見氏)。今回の取り組みには、海洋資源の保護と漁業の活性化をめざす「漁業創生」を掲げる、くら寿司ならではの目線が活かされていることを語った。現在のところ「オーガニックはまち」はブランド魚として売り出し、まずは高級スーパーやオーガニックスーパーなどでの販売の可能性を探っているところだという。
今後の展望として、「くら寿司にとって、新たな事業のひとつと位置付けて育成していきたい。漁業の活性化はもちろん、日本の水産業が持つ力をもっと世界に発信していけたら」と黒見氏は話し、引き続きオーガニック水産物の生産に意欲的に取り組むくら寿司の方針を明らかにした。