ますます多様化する現代チューハイ事情 連載:深掘りすれば見えてくるチューハイ編
新商品が出れば、一度は試してみたい! そんな消費者心理に後押しされて、チューハイ市場にはさまざまな商品が次々と現れ、活況を呈している。価格的に優位であることに加え、フレーバーの多様性や健康志向に応えた機能系商品の拡充もあって、その勢いはとどまるところを知らない。ここでは3つのキーワードで最近のチューハイ事情を探ってみる。
【キーワード① 新規参入】ビール会社はもとより飲料メーカーも市場に参入
チューハイ市場の拡大にビール会社が寄与したのは言うまでもないが、ここにきて主要4社以外も市場に参入。沖縄に本社を置くオリオンビールである。ビール製造60年の同社がゼロから始める新たな試みとして、2019年5月、チューハイブランド「WATTA(ワッタ)」を立ち上げた。
消費者の嗜好が多様化する中、「ビールが好きな人も苦手な人も一緒に楽しめるお酒を。そして沖縄で暮らすすべての人が『私たちのお酒、私たちのおいしさ』と感じられるブランドを」との想いから生まれた。ブランド名の「WATTA」は、「ワッター(私たち)自慢の県産果実・県産素材で割ったチューハイ」という商品設計に由来する。パッケージには「オリオンドラフトビール」のデザインモチーフを取り入れ、同社のブランドであることを訴求。また、飲みたい時に飲みたいアルコール度数が選べるように、缶体の正面中央にアルコール度数を表わす数字を盛り込んでいるのが特徴だ。
新規参入といえば、やはり日本コカ・コーラ社の「こだわりレモンサワー 檸檬堂」だろう。大手飲料メーカーがチューハイ市場に参入とあって大いに注目を集めた。しかも、ここ数年ブームが続くレモンサワーに特化したブランドである。18年5月に九州エリア限定で先行発売し、19年10月より全国発売した。想定を上回る販売数に出荷休止となったことは記憶に新しい。
これほどまでに支持されたのは、異業種参入という物珍しさもさることながら、レモンサワーとしてのおいしさが十分にあったからだろう。丸ごとすりおろしたレモンを、お酒にあらかじめ漬け込む前割り製法を採用し、居酒屋で味わえるような本格感のあるレモンサワーに仕上げている。
さらに特筆すべきは、その日の気分で自由に味わえるように、4つのアルコール度数を揃えていることだ。ガツンとくるストロング系もあれば、甘くてライトなレモンサワーもある。同じブランドの中で度数を選べるという点では、オリオンビールの「WATTA」に通じており、チューハイの新機軸として注目すべきところだ。