発酵ブームに広がり スーパーや農協も活用可能なBtoBの発酵製造メーカーに注目
売れ残り品はB級品を発酵ピューレにして付加価値をつける
通常、醗酵には半年から1年はかかると言われている。ひとつの食品に対し醗酵に適した麹菌は1種類しかなく、どうしても発酵に時間がかかってしまうからだ。それに対し、21種類以上もの酵母が共生しながら醗酵できる特殊な種菌を用い、あらゆる果物、野菜、海産物などを、2日もあれば発酵を完了させられる技術により、売れ残り品やキズあり品にも、新たな商品としての価値を与えられると注目されているのが、アットハンド(香川県)の『醗酵ピューレ』だ。
「「佐賀大学の先生が発見した酵母で、もともとは、市場には出せない農家のB級品に付加価値をつけ、農家のブランドとして販売してもらうことを狙いにスタートした」(醗酵事業部醗酵工場責任者・植村洋一郎氏)
3、4年すると、業界内にアットハンドの名前が知られるようになり、業務用としての用途も広まり、乾物業者、アイスクリームメーカー、化粧品会社などからオファーが入るようになった。
「昨年の食品開発展をきっかけにして、日高産昆布の試作品をつくっているところ」(同)
一般家庭で昆布出汁をとる機会が減っているなか、それをピューレにすることで、新たな利用価値を見出そうという試みだ。試作品は昆布の色味そのままにピューレ状になったものだが、口にしてみたところ、昆布のうまみがしっかりと抽出されており、使い勝手もよい。さまざまな用途が考えられそうだ。
変わったところでは、うに、かつおぶし、一味唐辛子、抹茶などでも試作したことがあるという。
外食大手からの引き合いもある。こちらは試作品のペースト状態を確認しながら、商品化に向けて改良が進められているところだ。またJA(全農)からも、売れ残り品の再利用という話が入っている。
この『醗酵ピューレ』は、添加物も一切入らず、野菜や果物などは素材感もしっかり残る。たとえばトマトの『醗酵ピューレ』は、トマト独特のツブツブ感にイチゴのような甘さがプラスされたものに仕上がる。健康志向の人には、ネットを通じて、アットハンドの『醗酵ピューレ』はかなり知れ渡っており、冬場はいちごやレモンのピューレがとくに人気だという。
「食品スーパーで売れ残った野菜を安く処分するのであれば、『醗酵ピューレ』に加工するほうが、高い付加価値をつけられる。瓶詰にするとコストもかかるが、パウチにして販売すれば、手ごろな値段で販売できるのでは」(同)