アングル:中国アリババ帝国に陰り、抖音とピンドゥオドゥオが猛攻
[北京 9日 ロイター] – アリババ・グループは10年以上にわたり中国の電子商取引界で王者の座を誇ってきたが、最近は競合他社の猛攻に押され、その地位が揺らいでいる。
同社は今週、電子商取引事業を中国と海外の2部門に再編すると発表した。
アリババは国内で有名ブランドが出店する「天猫(Tモール)」と、あらゆる種類の事業主が参加できる「淘宝網(タオバオ)」という2つの主要サイトで年間1兆ドル以上の注文をさばいている。
しかし、事業主から徴収する顧客管理収入(CMR)の伸びは急激に減速。7―9月期の伸びは3%と、前年同期の20%を大幅に下回った。CMRは通常、売上高全体の3分の1から半分を占める。
アリババは先月、全国的ネット通販イベント「独身の日」の販売総額(GMV)が今年は8.5%増と過去最低の伸びにとどまったとして、年間の売上高見通しを下方修正した。
アリババの減速は規制改革に加え、コロナ禍による景気減速で消費者が財布のひもを締めたことも一因となっている。
しかしライバル各社がアリババを出し抜いているのも事実だ。事業主やアナリストによると、北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営する中国版TikTok(ティックトック)、「抖音(Douyin)」がライブ配信型販売でアリババをしのいでいる一方、米ナスダックに上場している電子商取引のピンドゥオドゥオは地方やディスカウント販売でアリババをリードしている。
アリババはロイターに対し、これまでも常に厳しい競争に直面してきたと説明。強力なライブ配信ツールである「タオバオ・ライブ」や、ディスカウント販売プラットフォームの「タオバオ・ディールズ」を事業主に提供していると説明した。
抖音の好調ぶり
関係筋によると、抖音は今年GMVを1兆元(1550億ドル)に伸ばす狙いだ。関係筋が示した昨年の実績見込みの6倍以上となる。
抖音はコメントを控えた。
音の1日のアクティブユーザーは6億人を超える。同社は2018年からプラットフォームへの出店を受け入れ始め、今年はブランドによる旗艦店の開設を簡易化した。
コンサルティング会社クエストモバイルによると、抖音は10月に各ユーザーのサイト滞在時間が平均1871分と、淘宝網の350分を大幅に上回った。事業主はこの点に魅力を感じている。
その上、アリババのライブ配信は著名インフルエンサー2人の配信に視聴が集中する傾向があるのに対し、抖音は幅広いライブ配信者が視聴者を獲得している。
北京在住の会計検査官、ゼン・ヤンさん(42歳)は「毎日仕事の後、抖音でネットサーフィンしていたら1時間かそこらはあっという間に経ってしまう。大勢のインフルエンサーがあらゆる物を売っている」と語った。
安さが強みのピンドゥオドゥオ
抖音の対極にあるのがピンドゥオドゥオだ。こちらは価格の安さに加え、ユーザーがメッセージプラットフォーム上で購入品を分け合って少しでも安く買えるようにするグループ購入モデルが人気を集め、地方在住者の間で普及している。
同社のGMVは昨年、66%も増えて1兆6700億元となった。ゴールドマン・サックスによると、今年第4・四半期の伸びはこれより低い20%となる見通しだが、それでも最近のアリババよりもずっと堅調だ。
地方における電子商取引は「人の商売」という側面が強く、アリババは主要な地元事業主やメーカーとの関係構築でピンドゥオドゥオに何年も遅れを取ったとアナリストは言う。
「既にピンドゥオドゥオを使って安値で買い物をしている消費者が新しいプラットフォームに切り替えるのは難しい。ピンドゥオドゥオに慣れている工場や地元の生鮮食品店にも同じことが言える」と上海のアナリストは語った。
規制も逆風
アリババには抖音やピンドゥオドゥオの他にも、しっかりとした競合他社が少なくとも8社は存在する。
しかもアリババは当局の締め付けにより、関心を示した事業主に独占出店を要請する方針を放棄せざるを得なくなった。
ワンシン・コンサルタンシー(上海)のルー・ジェンワン最高経営責任者(CEO)は「アリババがこの状況をひっくり返せるとは思わない。守備のための戦略を採用することしかできない」と述べた。