アメリカ小売で進む「ミドルマイル」の効率化とフルフィルメント業務の自動化の最前線

アマゾン(Amazon.com)のスピーディな配送インフラに対抗するため、米小売市場では「ラストマイル配送の革新」に昨今スポットライトが当てられてきた。しかし最近になって、「ミドルマイルの革新」も重要課題として注目されはじめ、単なる配送のスピードアップだけでなく、物流全体に係るコストダウンをめざす動きも活発化している。主要企業の物流領域での取り組みをレポートする。
「ミドルマイル」が注目される理由
「ラストマイル」(あるいはラストワンマイル)は、小売業者の拠点(倉庫や店舗)から消費者の手に渡るまでのモノの移動を指す。対して「ミドルマイル」とはその前、つまり小売業者の倉庫や店舗間の移動を意味する。
ラストマイル配送はオペレーションが複雑なうえ、1配送当たりの積載量が小さいため、コストの大幅な削減は難しい。一方でミドルマイル配送は大量の商品を決まった拠点間で往復移動するルーチンワークであるため、コスト削減の余地がある。
コロナをきっかけとした消費のECシフトの動きは、“ポストコロナ”の時代に移っても元に戻ることはないとみられているのは周知のとおりだ。ECの売上が増えれば増えるほど、ラストマイル・ミドルマイルにおける移動量も増え、すなわち物流コストの増加に直結する。そうしたなか、全体の配送コスト抑制の策として、手を入れやすいミドルマイル効率化のための取り組みに注目が集まっているのである。
ウォルマートは自動運転トラックの実験を拡大

米小売最大手のウォルマート(Walmart)は2019年7月から、ミドルマイルを対象とした無人自動運転車の開発企業、ガティック(Gatik)と提携し、本部を置くアーカンソー州ベントンヴィルで、ダークストアと店舗間(約2マイル=約3.2km)におけるテスト走行を開始した。万一の事故に備えて運転手も同乗し、7万回におよぶテストを実施。今年に入ってからは同じルートを完全無人かつ、複数の温度帯を管理できる自動運転ボックストラックに変えてテストを継続している。同時に、ルイジアナ州ニューオーリンズとメテリー間で、自動運転トラックが、店舗と店舗から20マイル(約32km)離れた場所にあるピックアップ拠点の間を無人配送する実験も始めている。
一方、提携先のガティックは昨年11月、シリーズAラウンドで2500万ドルの資金を獲得し、今年1月からカナダのスーパーマーケット(SM)大手、ロブロウ(Lob-laws)社とも自動運転による配送テストを開始。また4月1日には、いすゞ自動車の米国法人との協働で、完全無人の自動運転中型トラックの開発を行うと発表している。
中小の運送企業を取り込み配送インフラを拡充するアマゾン
アマゾンも
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