ドンキ親会社PPIHがゲルソンズ買収の衝撃! 米国高級スーパーをどう舵取りするのか?
PPIHは高コスト体質の高級スーパーをどう舵取りするのか?
そんなゲルソンズをPPIHが手中に収めた理由は何か。同社は「北米地域での店舗網拡大」「仕入れ・資材調達等におけるスケールメリットや経営効率の改善」「(PPIHが近年注力する)日本の農産品輸出の拡大・高品質のジャパンブランド商品の展開」などをねらいとして挙げている。
しかし筆者は、ゲルソンズという企業をPPIHがどう舵取りしていくのか、という部分に関心を持っている。というのも、これまで意気揚々と米国に進出するも失敗あるいは低空飛行に終わった多くの日系企業を目にしてきた経験があるからだ。
直近でも、米ECサイト「バイ・コム(Buy.com)」を2010年に買収した楽天(東京都)が昨年、米国のEC事業から撤退。「無印良品」を運営する良品計画(東京都)の米子会社・ムジUSA(MUJI U.S.A.)は昨年7月、連邦破産法11条を申請し事実上経営破綻している。日本では飛ぶ鳥を落とす勢いのニトリホールディングス(北海道)も12年に”渡米”し、ニトリUSA(Nitori USA,Inc.)を介して「アキホーム(Aki-Home)」を出店しているが、店舗数は最盛期の6店舗から現在は2店舗。当初は500店舗体制を目標にぶち上げていたが、撤収までは時間の問題だと筆者は見ている。ファーストリテイリング(山口県)も、米国ではまだ思うような利益は上げられていないはずだ。
日本企業が米国で思うような成果を出せない理由としては、①経営トップがやってきて陣頭指揮をとるようなことをしない、②買収された側は子会社となり何かと日本の本部に意思決定を委ねることになる、といったことが大きい。いずれにしても経営判断のスピードが鈍り、環境変化の対応に遅れがちになるのだ。さらに、日本と米国の流通業界の間には、とくにデジタルの領域で大きなタイムラグが存在する。日本側で米国の市場動向に合わせた判断を下すことは難しいだろう。
それだけに、PPIHがゲルソンズの経営にどう関わり、変革していくのかに注目している。米国においてもスーパーは利益率の低いビジネスだ。ましてやゲルソンズは、前述のようにワインバーを売場に併設するなど何かと高コスト体質の企業である。加えて、アマゾン対策としてのIT・ネットスーパーへの多額の投資も必要になってくる。
日本を代表するディスカウンターであるPPIHが、真反対のポジションにいるゲルソンズをどう舵取りしていくのだろうか。国内事業と海外事業の戦略が大きく異なるとはいえ、”巨大な金食い虫”を生んでしまった、という結果にならないことを祈るばかりである。