米2月雇用37.9万人急増、飲食業の回復目立つ 失業率6.2%に改善
[ワシントン 5日 ロイター] – 米労働省が5日発表した2月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比37万9000人増と、市場予想の18万2000人増を上回る伸びとなった。新型コロナウイルスの新規感染が減っていることや、コロナワクチン接種の拡大、政府による追加支援策が後押しした。労働市場は底堅さを増しており、向こう数カ月間で一段と加速する見通しだ。
1月の雇用者数は16万6000人増だった。2020年12月は8カ月ぶりにマイナスとなっていた。
アリアンツ・インベストメント・マネジメントのシニア投資ストラテジスト、チャーリー・リプリー氏は「経済が正しい方向に向かっていることの証しで、議会の追加経済対策も景気回復の追い風になるだろう」と述べた。
モルガン・スタンレーのエコノミスト、ロバート・ローゼナー氏は「今後数カ月、雇用の強い伸びを後押しする材料は存在する」としつつも、「最大雇用と一致する状況になるには依然長い道のり」と述べた。
もっとも、仕事が半年以上見つからない人はなお400万人を超えるなど、回復への道のりは険しい。連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は前日、雇用情勢を楽観視しながらも、年内に完全雇用へ到達する公算は「極めて小さい」と強調した。
国家経済会議(NEC)のディーズ委員長は統計を受け、雇用の回復には引き続きむらがあり、道のりは長いと指摘。また、大統領経済諮問委員会(CEA)のボウシー委員は、現在の雇用の「穴」が金融危機の時よりも深刻で、回復に向けさらなる支援が必要という認識を示した。
失業率は2月に6.2%と、1月の6.3%から低下した。ただ引き続き、仕事をしていない人が「職はあるが休職中」と誤って報告していることにより、実際の失業率はもっと高いとみられる。こうしたゆがみがない場合、失業率は6.7%で、職探しをあきらめた人も含めればに約9.5%に達する。
職探しをあきらめた人や正社員を希望しながらパートタイムで就業している人などを加えたより広義の失業率は、前月から変わらずの11.1%。
業種別の雇用者数は、飲食が28万6000人増え、雇用全体の伸びの大半を占めた。娯楽・接客に加え、将来の雇用を占う上で参考になる人材派遣業も底堅い。小売りは4万1000人増加。製造業も2万1000人伸びた。一方、建設は6万1000人減少。全米を襲った寒波が影響したとみられる。
PNCフィナンシャルのチーフエコノミスト、ガス・フォーチャー氏は「今のペースが続いたとして、雇用が景気後退前のピークに戻るのは7年近く先になる」と指摘した。
労働参加率は61.4%と横ばい。前年同月の63.3%からは低下し、女性の離脱が目立った。
失業者は何百万人もいるが、企業は労働者を見つけるのに苦労しており、雇用者の伸びを抑えている。オンライン授業を受ける子どもの世話のため労働力から離脱せざるを得ない女性に偏っている面もある。国勢調査局によると、1月は学齢期の子どもを抱える約1000万人の母親が働いておらず、前年同月と比べ140万人多かった。
バンク・オブ・アメリカ・セキュリティーズの米エコノミスト、ジョセフ・ソン氏は「FRBは労働情勢について、全ての所得層・人種を含む『幅広い』回復を望んでいる」とし、「改善しているものの、正常化には程遠い状況にある」と述べた。
2月の時間当たり平均賃金は前月比0.2%増。寒波の影響で、労働時間は週平均34.6時間と、34.9時間から減少した。
新型コロナの新規感染者数と入院者数の減速を受け個人消費は1月に増加し、エコノミストは第1・四半期国内総生産(GDP)予想を大幅に引き上げた。
エコノミストは労働市場がワクチン接種の拡大に合わせて春から夏にかけて勢いを増すと予想する。米議会が審議しているバイデン大統領の1兆9000億ドルの景気刺激策も雇用を増やすことにつながりそうだ。