米雇用3月は70.1万人減、9年半ぶり減少 失業率4.4%に悪化
[ワシントン 3日 ロイター] – 米労働省が3日発表した3月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月から70万1000人減と、前月の27万5000人増(改定)からマイナスに転じ、市場予想の10万人減を大幅に超える落ち込みとなった。新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた外出制限措置などが経済活動の停滞につながり、米経済のリセッション入りを示唆した。
雇用減はほぼ全ての部門に及び、2010年9月以来113カ月連続だった記録的な雇用増は新型ウイルスの感染拡大を受け頓挫。雇用の減少幅は09年3月以来最大となったほか、失業率は4.4%と、前月の3.5%から悪化した。0.9%ポイントの上昇は、1カ月の上昇としては1975年1月以来最大となる。
今回の統計の調査時期は3月中旬で、その後に大都市圏でのロックダウンや失業増加が起こっており、新型コロナの感染拡大による経済的影響が完全に反映されているわけではない。
労働統計局(BLS)のウィリアム・ビーチ局長は声明で、3月雇用統計の調査期間が「多くの事業や学校が閉鎖された3月後半より前だったことに留意することが重要だ」と指摘。さらに新型コロナのパンデミック(世界的流行)に関連する問題が回答率に悪影響を及ぼしたとし、正確性と信頼性を担保した上でBLSの基準に即して推定値を算出したとした。
1月と2月の雇用者数は合わせて5万7000人分下方改定された。失業率の市場予想は3.8%だった。エコノミストによると、失業増加により4月の失業率が10%を超える可能性があるという。
賃金の伸びは安定的だったが、過去の数値との見方が多い。時間当たり平均賃金は0.4%増。2月は0.3%増だった。3月の前年同月比は3.1%増と、2月の3.0%増を上回った。週労働時間は34.2時間と、2月の34.4時間から減少。レジャー・接客業では1.4時間縮小した。
労働参加率は62.7%と、0.7%ポイント低下。雇用率は60.0%と、1.1%とポイント低下した。
部門別の雇用者数は、レストランやバー、映画館などを中心にレジャー・接客業が45万9000人減少。ヘルスケア・社会支援業は6万1000人減、専門職・企業サービス業は5万2000人減となったほか、旅行代理店なども減少した。
衣料品、家具、スポーツ用品、書籍などを扱う小売店を含む小売業は4万6000人減少。ただ総合小売店では1万人増加した。
建設業は2万9000人、鉱業は6000人、製造業は1万8000人、それぞれ減少した。
一方、政府部門は1万8000人増加した。2020年の国勢調査のための臨時職員として1万7000人雇用したことを反映した。
ナロフ・エコノミクスの首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は今回の雇用統計について、「労働市場崩壊の氷山の一角に過ぎない」と指摘。ロヨラ・メリーマウント大学(ロサンゼルス)のSung Won Sohn教授は、「新型ウイルス感染拡大がいつ最悪期を迎えるのか見通せるようになれば、企業活動は徐々に回復する」としながらも、V字型回復を遂げる公算は小さい。米経済に対するマーシャルプランが必要だ」と述べた。
ロイターの集計によると、米国の新型ウイルス感染者数は24万3000人を超え、感染による死者数は約6000人。今回の雇用統計で極めて厳しい状況が確認されたことで、トランプ政権に対する批判が高まる可能性がある。
週間の新規失業保険申請件数は3月後半の2週間ですでに約1000万件に達しており、雇用統計の一段の悪化が見込まれている。
オックスフォード・エコノミクスは4月に少なくとも2000万人の雇用減少を予想しており、2009年3月に記録した80万人減を大きく上回るとみられている。