不確実性リスクへ「企業変革力」の強化が必要=ものづくり白書

ロイター
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三菱ふそうトラック・バスの生産ライン
日本政府が29日に閣議決定した「2020年版ものづくり白書」では、昨年の米中貿易摩擦に続き、今年の新型コロナウイルス感染症の発生など不確実性が高まるなかで、製造業は企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)の強化が必要になると指摘している。写真は三菱ふそうトラック・バスの生産ライン。5月18日、神奈川県川崎市で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 29日 ロイター] – 政府が29日に閣議決定した「2020年版ものづくり白書」では、昨年の米中貿易摩擦に続き、今年の新型コロナウイルス感染症の発生など不確実性が高まるなかで、製造業は企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)の強化が必要になると指摘している。強化実現に向けては、デジタル化を活用するとともに、設計力の強化を図るべきとした。

製造業は、1980年代半ば以降、グローバル・サプライチェーンを作り上げてきたが、不確実性の高まりにより寸断のリスクが浮上。例えば、足元の新型コロナの感染拡大が自動車等のサプライチェーンに影響を及ぼすなど「グローバル・サプライチェーンは、不確実性に対して脆弱であることが明らかになった」とした。

不確実性の高い世界で、日本の製造業がどう進むべきかについて、白書では「ダイナミック・ケイパビリティ論」を挙げた。これは、カリフォルニア大学バークレー校ビジネススクール教授のデビッド・J・ティース氏によって提唱された経営戦略論で、環境変化に対応するために、企業が自己を変革する能力のこと。1)脅威・機会の感知、2)機会を捕捉して、資源を再構成・再結合し競争優位を獲得、3)競争優位性を持続可能なものにするために 組織全体を変容、という3つの能力が必要とされる。

白書では、企業の変革力強化には、デジタル化が有効だと指摘した。

日本の製造業では、デジタル化やデータ活用と製造工程やマーケティングとの連携が十分に進んでいないという。また、旧来の基幹システムを抱える企業は、その更新や保守にIT投資を振り向けており、ダイナミック・ケイパビリティを制約していると指摘。ダイナミック・ケイパビリティを重視する企業ほど、バリュー・アップにより多くのIT予算を振り向けているという。

また、製造業では、製品の品質とコストの8割は設計段階で決まると言われており、不確実性に対応するためには、「製品設計」と「工程設計」の双方を含む「エンジニアリング」に高い能力が求められるとしている。

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